どうも、ヴィム・ヴェンダースの映像が好きみたいだ。
というわりに、「パリ・テキサス」とこの作品くらいしか見たことがないので、なんとも言えないのであるが。
この映画の概要を紹介するのは実に難しい。
物語があるわけではないから。
いや、全体を通底する物語がないだけで、登場人物全員にはそれぞれの人生がある。
その登場人物とは、革命前に存在していた会員制音楽クラブ「ブエナ・ビスタ・ソーシャル・クラブ」を冠したバンドのメンバー達である。
彼らの人生を紹介しながら、キューバのレコーディングやオランダとニューヨークのライブが流れる。
私のお気に入りは、コンパイ・セグントである。低い歌声の渋さもいい。映画中、一曲目に演奏される曲で彼とエリアデス・オチュアが歌うと、一気に引き込まれる。
また、映画撮影時に五人の子どもがいて、六人目を狙っているなど、なんともおしゃれなじいさんだ。
ピアノを弾いている、ルベンもよい。
体操教室のある、教会だろうか、ステンドグラスが沢山あるたてもので、ピアノを弾いている。見た目は冴えない細い枯れ枝のような体のじいさんなのだが、弾きだすと本当に上手い。
皆そうなのだが、見た目はくたびれたじいさんだ。だが、楽器やマイクを持つと、すごい演奏をする。そのギャップがたまらない。
劇中、イブラヒム・フェレールが母親から受け継いだという、ラザロの像を出し、彼を信仰していると言う。
ラザロとは新約聖書に出てくる人物。死んだ四日後に墓の前で泣くイエスに「出てきなさい」と呼びかけられて復活する。
また、別の喩え話でも登場する。金持ちと貧乏人の話だ。ラザロは全身を腫れ物に覆われた物乞いとして登場する。
死んだ後、金持ちは神に嫌われ、ラザロは神に安住の地を与えられる。金持ちは余りある財を他人のために使わないからだ。
フェレールはこのラザロを信仰している。「今の苦しみは無駄ではなく、いずれ救われる」ということを信じているということだ。若い頃、歌手としてソ連に遠征するような活躍をする フェレールだが、その後いくら歌っても自分が歌手としてクレジットされないことで、歌うことに飽きてしまい、靴磨きなどをして生きていく。とても恰幅のある南米的な女性と一緒に住んでいる。
その後、ライ・クーダーと出会い、キューバ音楽流行の立役者になる。
なんというか、誤解を恐れずに言えば、人間は結局最後はのたれ死にするものなのだと思う。それが基本だ。素晴らしい演奏技術を持っていても、それは一緒だ。だいたい幸せな死に方というのは訳がわからない。どうせのたれ死にするのだから、好き勝手すればいいのだ。
そんな清々しさがある映画だと思う。
といっても、輩然として、高速道路の追越車線で車を止めさせ、相手を轢き殺させるのはどうかと思うが。
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