池波正太郎をめざして

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明日は明日の風が吹く

今の心境にあわせてブログ名を変更しました。どうぞよろしく。肩の力をさらに抜いてやります。

「第二回 文章スケッチの広場」夕立がテーマです。

短編小説の集い 雑記

 絶好調で風邪をひいているまさりんです。

 ほんのりとした微熱があり、寒さと暑さが同時に存在しています。分かりますか。

 

 

 

 さて、今回は文章スケッチ大会に出場します。とはいうものの、どうもこれでは駄目な気がするのです。熱のせいにしておきましょう。容赦ないご指摘をお待ちしています。前回よりもちょっと工夫してみようと試みました。本当は詩のように書こうと思ったのですが、こうなってしまいました。ではお願いします。

novelcluster.hatenablog.jp

 

 地元の小さな商店街のことです。

 商店街の路地は複雑に交差しています。線路に平行に通る路地が、市役所の前を通る大通りへと続く路地と九〇度に交差しています。その直角を切り割るように四十五度に交差する路地が高架線の方から伸びています。

 線路に平行に通る路地には、文房具屋、料亭、金属のアクセサリー屋、焼き鳥屋、床屋さん、マッサージ屋さん、八百屋さん、お総菜屋さん、バー、中華料理屋さんなどが並んでいます。

 市役所へ向かう路地には、ジーンズ屋さん、串揚げ屋さん、クリーニング屋さん、台湾マッサージ屋さん、寿司屋さん、イタリア食材屋さん、花屋さん、靴屋さんが並んでいます。

 四十五度の路地には、整骨医院、美容院、スペイン料理屋さん、焼き肉屋さん、イタリア料理屋さんが並んでいます。

 三つの路地の交差点には、お母さんと三歳くらいの女の子がいます。女の子は雨が降っていないのに、黄色いカッパを着て、濃いピンクの長靴を履いています。お母さんはちょっと太っていて、ジーンズに上は黒いポロシャツを着ています。片手にはiPhoneを持ち、いじり、もう片手には傘と子どもの手を持って、交差点の線路に弊校に通っている路地にある歩道に立っています。斜めに切り割る道の方に向いて誰かを待っているようです。二人からはすべての道がよく見えます。

 

 やがて、徐々に小さな雷鳴が遠くで鳴り始めました。黒い雲がもくもくと頭上を覆っていきます。上には必要以上に電線が覆い、電信柱が林立しています。何本かは東北の地震以来曲がっています。八百屋さんのかけている、ニッポン放送のナイターに、「ジジジ、ジジジ」とノイズが混じりました。

 

 肩にのしかかるように、また気管を詰まらすような湿り気を皆が感じた瞬間、その瞬間に視界が白くなってしまいました。風呂桶をひっくり返したような勢いで空から水が落ちてきます。水はコンクリートを叩きます。パチパチパチパチと、音を立てます。女の子は大粒の雨がものすごい勢いで当って、「痛い痛い」と叫んで頭を抑えています。ちょっと嬉しそうです。お母さん動じることなく、スマホを見ています。

 

 線路と平行の路地の文房具屋さんは、軒先に並べてあったコピー用紙を中年とお年寄りの女性二人がかりでしまっています。

料亭から出ようとした禿頭の客は一瞬躊躇しています。

 金属のアクセサリー屋さんの店主はジーンズにTシャツ、その上には黒い革のベストを着ていて、外に出してあった金属の看板を急いでしまいました。頭は右半分をそり上げたツーブロックでした。

 焼き鳥屋さんは、黒い和風のユニフォームに、紺色に白で縁取りしてある板前さんの帽子を被った店員が出てきて、吹き込む雨を防ぐために入り口の扉を閉めました。

 床屋さんは白衣にクリクリパーマの太った五〇絡みのおじさんで、ハサミを止め、お客さんと何かしゃべっています。たぶん「凄い雨が降ってきました」。「ああ、本当だ」。

 マッサージ屋さんの力仕事をしているとは思えないホネホネの白衣上下の男性は外の雨に一瞬目を向けた後、そのまま揉み続けます。お年寄りの太った女性のお客さんは夢心地です。

 八百屋さんのオヤジさんは前掛けに八百屋さん帽子を被りっていて、「愛媛蜜柑」と書かれたダンボールをひっくり返して作った商品棚を上に置いてあったキャベツのザルを箱ごと急いでしまいました。

 お総菜屋さんは眼鏡をかけたパーマのお年寄の女性で、雨に煙る路地を口を半ば開けてみています。

 バーは開店にはまだ早く誰もいません。

 中華料理屋さんは太った二人の中年夫婦で、フライパンで炒める音で、外の雨に気づいていません。テレビのニュースのせいでもあるでしょう。

 市役所へ向かう路地のジーンズ屋さんの細身のおじいさんは店頭まで顔を出し、雨の様子を窺っています。

 串揚げ屋の厨房では店長の仕込みの包丁がいったん止まり、女性店員は網戸の入り口とガラス戸を閉めます。二人とも、やっぱり紺色の作務衣のような服を着ています。

 クリーニング屋はショートカットの中年の奥さんと、ランニング姿の主人がめげずに手を動かし続けています。

 台湾マッサージ屋は怪しいほど様子がわかりません。

 寿司屋は昔からある店で、常連さんだけで店が回っています。それくらいの店ですから、雨くらいで動揺しません。

 イタリア食材店ではてんやわんやで若い女性の店長が外に置いておいたパスタを回収しています。彼女は中学時代バレー部でした。

 花屋は店の前に並べてあったカーネーションなどのあまり高くない商品を恰幅のいい、後ろで髪を束ねた、黒いエプロンをした、眼鏡をした、中年の店員さんが店内に回収しています。店長は小柄でオールバック白髪のおじいさんです。

靴屋さんは中年の女性でワゴンセールのサンダルを、しまっています。

 四十五度の路地のマッサージ屋は店の前に直立したたぶんエジプトの猫が、お皿を持っている像があります。そこには割引券がはいっているのですが、それを一生懸命回収しています。

 美容院の雑にカットするのに、まあまあの出来映えになってしまうのが有名な店長は、いっつもアロハを着ていて、独特なチーズみたいな体臭がするのですが、「すげえ、雨がふっちゃったよ」とお客さんに話しかけ、ヘラヘラ笑っています。

 スペイン料理屋のフランス人コックは外に出してある円卓の席を店内にしまっています。

 焼き肉屋からは関係なく煙が盛大に上がっています。至りや料理屋さんのなかには誰もいません。

 路地の交差点にいる母子は、降り出した雨が分かっていたかのように、母親は傘を差し、もう一方の手でiPhoneをいじっています。三歳の黄色いカッパと濃いピンクの長靴を履いている女の子は、頭の両サイドにちっちゃい結び目をつくっているのですが、今はカッパで見えません。三つの路地のあつまる場所は、車や人や自転車が頻繁に通るので、アスファルトが削れていて、水が瞬く間に溜まってしまいます。その水たまりで、遊んでいます。上で飛び跳ねたり、水を窪地から出そうと、足で蹴り上げ、掻き出したりしています。「やめなさぁい」と気のない声で母親が咎めます。

 近くをずぶ濡れで下着が透けている女子高生が鞄を傘代わりにして走っていきます。自転車にのったおばあさんは「あー」と気のない悲鳴を挙げ、とても急いでいるとはいえないスピードで急いで通り過ぎます。配達途中といった感じの三輪のバイクが四十五度の道から線路に平行な道に曲がっていきます。カッパも傘も差していないので、ずぶ濡れです。野球部だろう禿げ頭の高校生が、うひゃひゃうひゃうひゃひゃと気持ちの悪い笑い声を挙げながら走っていきます。OLさんが、「アタシ濡れてないですよ」という感じで颯爽と歩いているが、濡れて長い髪が顔にも薄い青のストライプのブラウスに張り付いています。

 雨が降った途端、街中が早送りになったように急いで動いています。

 

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 数分で、雨は上がりました。でも、たくさん雨が降ったので、そこら中が濡れそぼっています。そして一気に湿度が上がりました。蒸し蒸しするようになりました。

 街はまた夕方のゆったりとした時間に戻りました。人々の動きもゆっくりとしました。

 女の子は少し残念そうです。おかあさんに、「やんじゃったね」と話しかけます。「ふん、ふん」とお母さんは生返事を返して、スマホから目を離しません。

 女の子は線路と平行な路地の方の空を見上げました。凄い勢いで雲は流れていきます。女の子は口をあんぐりと開けたまま、それを眺めます。やがてお日様の光りがまた当るようになり、残った雨雲をシャンパンのような色に染めています。女の子はおかあさんに「綺麗だよ」と話しかけます。おかあさんは「ふんふん」と生返事。

 

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 やがてお日様が沈みかけ、雲は赤黒く染まっています。炭火のような色です。女の子がそれをじっと眺めていると、おとうさんが駅から斜めに伸びる道からやってきました。女の子が「おとうさん」とかけより、スーツ姿のおとうさんの膝あたりに手を回してまとわりつきます。ちょっとかっぱが乾ききっていなかったので、「おいおい、お前濡れてんじゃんかよ」と言いつつも、抱きついているのはそのままにしました。

「おそかったね」とおかあさんも笑顔です。

「雨降ったろ」

「すぐ止んだけどね」

「電車から見えたよ。凄い雨だった。ちょっと徐行したもんな」

「そう。傘要らなかったね」

「そうだね。無駄骨したね。買い物して帰ろう。ほら」

 スーツもポケットからシャボン玉セットを取り出しました。「もらっちゃったよ」。早速、中身を出して、女の子は上機嫌でシャボン玉を吹きます。あまり上手じゃありません。

「やってえ」

 とせがみますが、帰ったら、といなされました。

 シャボン玉を後に残しながら、親子は買い物をするために、濡れた路地を駅の方へ歩いて行きました。焼き肉屋さんの前にはゴリラがあったのですが、女の子でも抱えきれないくらいの大きなゴリラに変わっています。その焼き肉屋さんの名前も「ゴリラ」です。女の子はシャボン玉に夢中でゴリラに気づきませんでした。

 

了(3681文字)←Word調べ。

 

 あえて人物を出してみました。しかし、登場人物の心象風景にならないように気を配りました。できてるかな。不安だな。感想お願いします。

 

 

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