池波正太郎をめざして

明日は明日の風が吹く

今の心境にあわせてブログ名を変更しました。どうぞよろしく。肩の力をさらに抜いてやります。

「第八回文章スケッチ」お題「師走」に参加します。

 

 お久しぶりのまさりんです。

 ちょっと傷心気味なのですが、理由は過去記事を見てください。こういうときこそ、「ルーティン」をしっかりこなしていくべきだ、とさっき気づきました。ということで、「文章スケッチ」に遅くなりましたが参加します。主催者様、遅くなりまして申し訳ありません。よろしくお願いします。

novelcluster.hatenablog.jp

 

「上野アメ横

 十月三十日の御徒町のホームには人が集まっていた。休日の人並みのゆるりとした流れに乗って改札口へと進む。何を意図してか乗降客の多さに比して、改札の数も少なく、通路も階段も薄暗く、狭い。ホームもまたしかりで、転落しそうなほど、人が詰まっている。転落防止の柵がきちんと備え付けられていればよいのだが、山手線の側には設置されているが、京浜東北線の方には設置されていない。

 休日のゆるりとした人々に合わせゆっくりと進む。平日違い、乗客のほとんどをしめるスーツ姿の会社員ではなく、みなカジュアルな装いだ。狭い階段を降りて、下にあるトイレの悪臭をかぎながら右手に曲がり、数段の階段を降りるとその数機の自動改札が見える。少ない自動改札は人でごった返しているのだが、女性が出られなくて詰まっていた。SUICAを所定の位置でタッチしても、タッチするところが赤く点灯、“ピンポン”という警告音が鳴り響く。二度、三度とその音が鳴るのだが、その都度女性は諦めずにタッチする。その女性客は三十代だったが、十回の警告音が鳴ったくらいで、諦めて列から離れた。酔っているように顔が赤いが、酒ではなく含羞だった。

 南口の改札を出ると、頭上に案内図があり、その案内の通りに左に曲がると、目の前にユニクロがある。ビル全部がユニクロだ。再び右に曲がると、小さな横断歩道があり、園さきにアメ横がある。赤信号で止まると、脇にミカンを売っている屋台がある。屋台は人の流れのせせらぎを遮る小石のように浮かんでいる。

 空は年末の快晴である。気温は歳末だと思えないほど暖かい。

 信号が青に変わり短い横断歩道をわたる。改札から続く人並みはゆっくりと進む。アメ横の露天と露天の間の道は軽自動車がやっと通れるくらいの幅しかない。少し上を見ると、白い丸の看板に一文字ずつ、赤字で書かれた「アメ横」の文字が光っている。その下には横断幕があり、「庶民のアメ横 楽しい買い物 アメ横商店街連合会」と青地で書かれている。左手には「Tax Free」の看板がある。

 前の人に続き、半歩ずつ進む。止まるたびに後ろから来る人に追突され、前の人にぶつかってしまう。右手に並ぶ店には、「ロンドンスポーツ」など衣料品店が多い。続いて「二木ゴルフ」、「シルクロード化粧品」などが、並び、歳末のバーゲンをしている。「コトブキゴルフ」の前には早くも福袋も並んでいる。

 「シルクロード化粧品」の前では呼び込みの女性がいて、その声につられて見るとワゴンセールをしていた。ワゴンには大量の化粧品が載っていた。左手からも呼び込みの声も聞こえる。店の軒先にはまぐろ、中トロ、かまぼこ、生サーモンなど商品名が書かれた短冊が下がっている。魚屋だと思っていると奥に丼屋のメニューがはってあった。そのすぐ先には左に曲がる細道がある。曲がり角には「摩利支天 徳大寺」と書かれた看板がある。

 いろいろな人々が交錯する。マスクをしたおじいさん、髪の長い小太りの中年の女性、水色のバックパックを背負った短髪の若者、みなかになどの海産物を目当てにやってきていて、海産物の店の前には人だかりができている。軽自動車がやっと通れる道の半分は逆の方向に流れる人がやってくる。

 左手にはコーヒー豆が売っていて、海産物屋から続く人だかりが隣まで膨らんでいた。上に再び横断幕があり、「火の用心」と赤字で書かれ、その下には「アメ横商店街連合会」と青字で書かれている。

 アメ横の半分まで来て、左手に曲がる。通りにある「ムラサキスポーツ」、右手に曲がり、多くの服屋やポーターなどの有名ブランドのアンテナショップを過ぎ、右に曲がると再び、アメ横の食料品が多く売っている通りに入ってくる。ちょうど残り半分を上野側から逆に歩く。

 通りの入り口には警察官が立っていて、「掏摸が横行しているので、財布は鞄の中にしっかり入れ、身体の前に抱えるようにしてください」とアナウンスしている。その通りにしている小柄の中年女性が通り過ぎていった。ここからは本格的に魚屋が増えていく。各魚屋さんからは威勢のよい声がかかる。各店の台の上には必ず共通してかにの足といくらが載っている。値段もそれほど差があるわけではない。しかし、店員さんの呼び込み方には個性があった。ある店では伝統的な手法である、大声での呼び込みをしていて、野太い声は枯れていた。人々はそれにつられ、店を眺めていく。ほかの店では、「SEALS」を思わせる呼び込みで、「小田原、かまぼこ。小田原、かまぼこ・・・・・・」とラップ調で呼び込みをかけていた。あまり魚屋さんと関係ない店でも、「かまぼこセット一〇〇〇円」と声を大にして呼び込んでいた。かまぼこセットは、「かまぼこ・伊達巻き・なると」の三点で一〇〇〇円だった。

 中間あたりに、中東系の店主が経営しているケバブやケバブ丼の店があったり、逆には韓国料理の屋台があった。別に正月セットを売っているわけではないのだが、店主が興奮して魚屋と同じように呼び込みをかけていた。各店舗、大賑わいであった。

 魚屋などの間にひっそりとジッポライターの専門店や、スカジャンの専門店、バッグの専門店が並んでいて、ここも盛況であった。どことは書かないが、「今日で閉店、お値段は表示の価格からさらに一割引きます」といつも言っているというのはご愛敬。

 ちょっと道を外れると、立ち飲み風の飲み屋さんなどが広がっていた。ビニールで通りの喧噪を遮断した店内はどこも満員であった。そこも買い物疲れをした人が休憩をしていた。

 年末の活気があふれるが、どこかのどやかでもあるアメ横であった。

 

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