今日の十分日記

今日の十分日記

原点回帰の雑記ブログ。十分で書ける内容をお届けします。十分以上書くときもあるけどね。十分以下もあるし。

渥美清の魅力--十分日記119

スポンサーリンク

「拝啓天皇陛下様」と言う映画を見た。前々から渥美清主演の傑作映画という話は聞いていたので、いつか見たいと思っていた。この正月千葉テレビでやっていた。撮ろうと思っていなかったが、ハードディスクレコーダーがカテゴリごと取るのでそこに引っかかっていたのだ。

実際を調べていないのだが、渥美清と言う役所にあて書きをしたような映画であった。山田と言う役を演じているのであるが、渥美清ではないともっと陰惨な話になってしまうのではないか。

話の主題はと言うと結構説明が難しい。反戦のようで反戦では無いようで。コメディーのようでいて、まったくのコメディーとも言いきれず。何とも言えない味になっているのである。

話は山田(渥美清)と棟本(長門裕之)が岡山にある陸軍の連隊に入隊するところから始まる。ここですごいしごきを受けたと言うシーンがあると思いきや、山田視点で描かれた軍隊の生活は太平楽と表現されるものであった。カタカナしか字が読めないと言う山田の設定を考えるだけで、山田が「娑婆」でどのような極貧生活を送ってきたかが想像つく。昔の話といっても、日本は江戸時代から識字率は高い。しかもとっくに学校制度が確立した後なので、普通にひらがな漢字和実習っている。学校に行けない位極貧だったのである。

その山田は軍隊で学校に行った子供が習うようなさまざまを学んでしまう。実際に代理教員だった男に時も子供用の漫画なら読める程度に教わる。

山田館日本軍は中国大陸でちょっとやばいことをしてきたらしく、軍隊で様々な基礎教育を受けた山田は、終戦後感覚を普通に戻せなくて、軍隊流のやり方で生活をしてしまう。棟本夫婦に終戦後も厄介になるようだが、そのお礼に鶏肉を食べさせたくて、現地徴用してしまったりする。惚れた子家さんのために華厳の滝から死体を回収する仕事をしたりする。

全く困った男なのであるが、渥美清が演じると愛嬌のある全く可愛げのある男に変化するのである。それは渥美清が寅さんだからという、役からの印象ではなく、渥美清という役者の魅力が先なのだろう。つまり虎さんも山田も、渥美清だから演じられたのであり、他の役者が演じれば、両方ともに成立しないだろう。

山田は軍隊式の基礎教育を受けたと言う意味では悲劇であるが、「娑婆」にいたら基礎教育自体が受けられなかったと言う意味では、軍隊にいて良かった男なのである。

誤解だったのであるが、南京が陥落した後に戦争が終わると聞いて、山田は天皇陛下に直訴状を書こうとする。戦争が終わっても自分だけは軍隊に居させてほしい、と言う願いであった。

その時の手出しが「拝啓天皇陛下様」なのである。

渥美清が演じる軽妙さが、山田に関する二重の意味が際立つ。その際立ちに同情してしまうのである。

今なら誰がと思うが、ちょっと今の役者にあの愛嬌はないだろう。

 

<あの頃映画> 拝啓天皇陛下様 [DVD]

<あの頃映画> 拝啓天皇陛下様 [DVD]