一聴すると、なんの変哲のないカバーアルバムである。曲目を書き出してみよう。
Afica (ToTo)
Everybody wants to rule the world (Tears for fears)
Sweet dreams (Eurythmics)
Take on me (a-ha)
Happy together (The turtles)
Paranoid (Black sabbath)
Mr. blue sky (Electric light orchestra)
No scrubs (TLC)
Billie Jean (michael Jackson)
Stand by me (Ben E, King)
マイケルジャクソンのファンであるうちのカミさんも痛く興味を持ったので、CDでこのアルバムを購入した。ビリージーンの出来には満足しなかったらしいが、全体的にはよいアルバムだと感じたらしい。
さて、どうしてこのアルバムが新地合いの幕開けにふさわしいかというと、これが未来の日本の状態を指示しているからだ。ヒントは「Teal」という名前だ。(面倒だからカタカナで以下書く)ティールとは緑青である。解説ではそこまで書いていなかったが、緑青とは大きな意味を持つ。
フレデリック・ラリーというマッキンゼーのもとファシリテーターが提唱している組織論がある。その名前が「ティール型組織」という。
組織の発展段階には五種類ある。それは色で示される。レッド・アンバー・オレンジ・グリーン・ティールだ。レッドとはマフィア型の組織。アンバーは学校や軍隊のような順応型の組織。オレンジは成果主義的な社会。グリーンは共生型の組織。ティールは進化型の組織だ。
フレデリック・ラリーの本は英語で書かれ、日本語に訳されているのだが、翻訳者たちは種々の分野の専門家なのだが、日本の現状はこれらが入り混じっている状態とみている。私には、九十年代末期から00年代で成果主義への移行に失敗し、再びアンバー型の社会に戻りつつある状態であるように感じられる。
これから、日本社会は当然グリーンの状態が理想になってくる。移民を受け入れなければならなくなり、(フェミニストの努力とは関係なく必要から)女性の社会進出は進む。グリーン型の社会とは、病気を持つもの、障害を持つもの、様々なシチュエーションの人間の存在が否定されない社会になる。この方向はみな見えているだろう。
ティールは説明は難しいが、「全体性と個人が調和している状態」だと思えばいい。グリーンとの差は、全体性だ。これは全体主義ではない。そこが近代と違う。生き生きとした個人が活躍しながら、社会全体をみんなで運営していくイメージだ。付け焼刃なので、つっこみなしね。どうにも説明がしにくい内容なので。
さて、どうしてweezerのアルバムがティールな状態なのかは、曲目をみればわかる。見事にジャンルもばらばらである。そのばらばらな曲たちをバンドが生き生きと楽しそうに演奏している。気合も衒いもなくのびのびと仲間とうたっている。そして、それが全体、一枚のアルバムになっている。ティールな状態が体現されているのである。
「take on me」がPVになっていて、そのシチュエーションがティールのアルバムの思想(という大げさな言葉がどうにも似合わない)を体現していた。
我々の社会はどう抵抗しようと、グリーンの状態へは移行する。
その後がラル―の言うティールになるかどうかはわからない。だが方向性は間違いではない気がする。思想は学ぶのではなく、体感するのが一番だ。
新しい時代にふさわしいこのアルバムを聞いてみてほしい。
- 作者: フレデリック・ラルー,羽生田栄一,エティエンヌ・アペール,中埜博,遠藤政樹
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2018/11/27
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