今週のお題「秋の気配」
写真はヒグラシらしい。よくわからない。
秋の気配を一番最初にもたらすのは、ヒグラシの鳴き声だ。
小学校の頃の夏休み、もともと子育てが得意ではない母は、私を自身の実家に預けた。一週間とか二週間という単位だ。祖母の家は――なんとなく母の実家は「お祖父ちゃん家」というより、「お祖母ちゃん家」という印象が強い。世話をしてくれたのが祖母だからか――田んぼだらけのなかにある小さな集落であった。その周辺に一族が固まっていた。母屋の脇に杉か何かの木立があり、そこに大量の蝉が一斉に鳴いていた。母屋にいると、会話もできないくらいの蝉時雨だった。特に同年代の子供も周囲にいなかったので、私はよく蝉取りをしていた。
その蝉時雨は夏の終りまで続くのだが、その鳴き声が時期によって徐々に変化していく。夏の最盛期には、「ミ~ンミ~ンミ~ン」というアブラゼミ、「ツクツクボーシ」というツクツクボーシの声(そのまま)。夏の終りには、「かなかなかな」というヒグラシの声が加わる。夕方の薄暗い部屋に寝転んで、祖母が洗濯物をたたむのを見ながら、子供ながらに夏の終りのはかなさを意識したものだ。蝉取りは珍しいものはとれなくて、アブラゼミばかりだった。
だいたい新学期が始まると、運動会(その頃は秋だった)と文化祭に追われる。余裕を持って秋が来たと感じるのは、まずは8月の終りだったきがする。