今日の十分日記

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原点回帰の雑記ブログ。十分で書ける内容をお届けします。十分以上書くときもあるけどね。十分以下もあるし。

薬師丸ひろ子三作品「野生の証明」「セーラー服と機関銃」「Wの悲劇」 八〇年代は本当に良き時代なのか。

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 物欲の権化、まさりんです。

 

 

 若き頃の薬師丸ひろ子の作品を三本ほど見た。「野生の証明」「セーラー服と機関銃」「Wの悲劇」の三本だ。

 

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 「野生の証明」原作 森村誠一

 薬師丸ひろ子の映画デビューが「野生の証明」らしい。十三歳である。陸上自衛隊のレンジャー部隊所属の隊員だった味沢(高倉健)が頼子(薬師丸ひろこ)の父を殺してしまうところから物語が始まる。その理由はその後語られるのだが、父親があるウィルスに感染してしまい凶暴化する。東北のある村で、何十人も惨殺してしまう。それを止めるために父親を殺す。身寄りがいなくなってしまった頼子を味沢が育てる。表面上味沢になついている頼子だが、その実父親を殺された憎悪を隠している。

 頼子の父を殺したのは、味沢がレンジャー部隊の訓練を行っている最中で、事件をもみ消すかわりに、味沢は除隊する。除隊後二人が住む土地は、有力な金持ちである大庭(三國連太郎)が幅をきかせており、大庭に逆らっては生きていけない。閉鎖的な土地である。

 惨殺事件の真相を追う刑事北野、惨殺事件に姉が巻き込まれてしまう女性記者越智、そして味沢と頼子、やがて皆が悲劇に見舞われる。

 

 

 

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 「セーラー服と機関銃」原作 赤川次郎

 弱小暴力団目高組。

 組長が死に、その親戚であった星泉薬師丸ひろ子)に跡継ぎの白羽の矢が立てられる。そのおかげで泉は高校を退学になってしまう。

 子分は四人。彼らを率いて対立する暴力団と抗争をする。

 機関銃を撃って、「カイ・カン」というシーンが有名。

 まあ、対立暴力団のボスの娘、まゆみ(風祭ゆき)がフックになっているのであるが、それくらいで別段書くべき内容はない。渡瀬恒彦がかっこいい。最後のシーンで薬師丸ひろ子、渡瀬恒彦、大門正明で対立する組に乗り込むのであるが、そこでいきなり大門がゲイであるという設定が加わる。あれは付け足したのではないだろうか。

 

 

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Wの悲劇」原作 夏樹静子

 静香は劇団「海」の研究生である。新作「Wの悲劇」のオーディションがあった。結果、静香はメイド(端役)とプロンプター(セリフを忘れたときに、演者にそっと知らせる係り)になる。一番メインの役は、ライバルかおり(高木美保ことヒステリック農業)にとられる。

 が、静香は関西公演で宿泊していたホテルで、事故に遭遇する。事故とは劇団の大看板女優羽鳥(三田佳子)に関わるものだった。長い間愛人関係にあったパトロンが腹上死してしまう。羽鳥は、パトロンと関係にあった女性を静香に肩代わりしてくれるように頼む。静香は迷ったあげく、その役を引き受ける。かおりの役を静香に代わるように仕向けるという約束を、羽鳥がしてくれたからだ。

 そうして静香は役を射止めるのであるが、センセーショナルな話にマスコミが飛びつく。自分に同情を引かせるために記者会見を開く。静香は一世一代の大芝居を一つ一つこなし、舞台に上がる。

 無名時代に知り合った不動産屋森口(世良公則)は一連の静香の行動を見守る。が、ラストシーンで刃物を持ったかおりに静香は襲われる。それを森口は身を呈して守るのであった。

 

 

 三作ともまるで思想性がない。自衛隊を担ぎ出しておいて、思想的な部分には触れず、ドンパチをするための道具にのみ使うというのは凄まじい。暴力団の話でも、「仁義なき戦い」とは違い、どこかさわやかですらある。劇団もそうだ。もっとも大衆演劇をテーマにしておいて、思想性や政治性を出す方が大変なのかもしれない。

 まさしく八〇年代の日本映画だという感じがする。学生運動などの反動なのかもしれない。浅間山荘事件が七二年である。このような事件が発生すれば、政治運動などは一区切りだと思うだろう。そしてバブルが終わる頃にはゴーマニズム宣言などが出てくるから、また違う様相を呈してくる。

 軽やかな作品が多いのには他の要因もある。専門的に学んでいる人などインテリ層などは別だが、一般大衆にとって政治的なことや社会的なことを考える必要がなかったからだ。日本はこの頃、世界で最も経済的な発展を続けているのだから、若者だって悩む必要がない。若者はこれから自分が就職すれば、終身雇用に守られ、年功序列で一生を送れるのだと信じることのできる時期だ。政治なんて我々一般大衆にとって考えないで済む方が良いに決まっている。マツコデラックスなどはこの時期のことを「古き良き時代」と呼ぶことが多い。確か、「Wの悲劇」が好きだったと思う。

 ただ、その「考えなくても良い時代」が「バブル崩壊後の混沌」に繋がっていると考えると手放しでこれが良いとも言えないのだが。

 これらは角川映画であるが、角川春樹という人物は時代に対する嗅覚があるのだろうね。

 

野性の証明 (角川文庫)

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セーラー服と機関銃 (角川文庫)

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Wの悲劇 (角川文庫)

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 薬師丸ひろ子がみずみずしいと思った。役者として優れているかは分からないけど、ファンが多いというのは納得した。