運動不足のまさりんです。
連日の雨でいまいち運動できていません。スマホのアプリからは「運動しようぜ、さみしいよ」という励ましのメールが来ていました。そうだよな。そろそろなんとかしないと。
ディアハンターという映画を見ました。
村上龍が又吉直樹の小説「火花」を読んで、「長いと感じた」と評価しました。同時に、それは物理的な枚数の話ではなくて、長い作品でもそう感じないものもある、とも批評しました。ディアハンターという映画は三時間を越える映画です。間には一分間の休憩時間があります。ただ、見た人によるのかもしれませんが、私は長いとは感じませんでした。先の展開にワクワクしたからかもしれません。もちろん、「天空の城ラピュタ」のように、冒険活劇だということではありません。
ではその魅力を紹介しましょう。あらすじです。
この映画は、ロバート・デニーロ主演で、1978年に公開されました。
マイケル(ロバート・デニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーブン(ジョン・サヴェージ)、スタン(ジョン・カザール)、アクセル(チャック・アスペグレン)、ジョン(ジョージ・ズンザ)はピッツバーグのクレアトンという町に住んでいます。みな製鉄所で働いているのですが、いわゆるやんちゃなやつらです。
全員がロシア系の移民です。当時で言えば、ソ連系の移民です。これが結構大きな忌みがあります。
マイケル・ニック・スティーブンの三人はベトナム戦争に従軍することを決め、その壮行会とスティーブンの結婚を兼ねた会が催されます。スティーブンの妻は実は他の男の子どもを身籠もっています。ニックは突然、リンダ(メリルストリープ)に結婚を申し込みます。夜が明けて、六人は鹿狩りに行きます。マイケルは立派な鹿を仕留めます。
行きつけのバーに戻ってきた六人。突然ジョンがショパンのノクターンを弾きます。これが何とも言えない。全員の心情を表わしています。
ベトナムに従軍した三人は捕虜になってしまいます。
基地とも言えない、河の上に立てられた掘っ立て小屋に三人は収容されます。同じように捕まってきた捕虜とともに、延々とロシアンルーレットをさせられます。どちらが生き残るかをベトナム兵は賭けるのです。
スティーブンは半ば気が狂ってしまっています。マイケルとニックは機転とチームワークを駆使して、危地を脱します。
ただ、スティーブンは足をやられてしまい、帰国後両足を切断します。マイケルは故郷で英雄として迎えられます。ニックは現地でスリルの虜になってしまったのか、ロシアンルーレットの賭けの対象として戦い続ける日々を送っています。
実は三人は掘っ立て小屋から逃げる途中、はぐれてしまい、お互いがどうなっているのかは帰国してから知ることになります。お互いの事情を知ったマイケルはニックを救出に再度ベトナムへと向かいます。
というのが大体の話の筋です。
1,鹿狩りの意味
日本でも武士の時代には、鷹狩りなどを行なうことによって、軍事調練を行っていました。規律をとって獲物を追い込むので調練になるのですね。
この作品で出てくる狩りは巻き狩りではないので、調練にはなっていませんが、お互いの信頼醸成にはなるのでしょう。現にマイケルはニックに、「オレが組むのはお前だ」と信頼を寄せています。
また娯楽の要素も強く、みんなで狩りに行くことで、結びつきが強くなるのでしょう。
2,ロシア系
第二次世界大戦中にも、日系人の方々がやはりアメリカで、日本を取るのかアメリカを取るのかと選択を迫られたそうです。まったくもって、恐るべきことです。同様のことがペンシルバニアのロシア系の移民にも起こったのかもしれません。それを物語るシーンは存在しませんが。
ただ、ロシア系移民にロシアンルーレットをさせるなど、「ロシア」を強調する設定画多く見られるのです。
実際にベトナム戦争では「経済的徴兵」で、黒人が多く戦場に行ったそうです。イラク戦争でもそういう現象が起こりました。それを意味しているのかもしれません。
3,テーマは喪失感
この映画は喪失感がテーマではないかと思います。戦争に行く前と行った後で、失ったものが数多くあります。主人公のマイケルは、喪失したものを取り戻そうとあがきます。ベトナム戦争はアメリカという国自体がマイケルと同じ状態に陥ります。ベトナムから帰還した兵隊は二次大戦の帰還兵とは違い、あまり歓迎されず、帰った場所でなじめないということが起こりました。
しかし、結局マイケルはそれを取り戻せませんでした。帰国後もう一度鹿狩りに行くのですが、見事な角をもつ鹿に出会います。ところが、追い詰めて追い詰めて、最後に逃がします。そこで「これでいいのか」と叫びます。取り戻せない、ということを受け入れる覚悟をここで決めたのかもしれません。
この年になると、さすがに喪失感がうようよと心の中に沸いてきます。だからか、戦争に行ったことがないのに、どこかで共感してしまう映画でした。