今日の十分日記

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原点回帰の雑記ブログ。十分で書ける内容をお届けします。十分以上書くときもあるけどね。十分以下もあるし。

ニキ・ド・サンファル展に行ってきました。カラフルで後半は癒されます。

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 休養中のまさりんです。

 三連休いかがお過ごしですか。私はこうして文章を書いております。こののちは、ちょっとやらなければならない作業があります。憂鬱です。休養になってませんね。

 

 三連休のご予定は決まっておりますでしょうか。もしも決まっていなかったら、晩秋のひととき、芸術に心身を浸すのもよいではありませんか。けれども、ただ絵を見ても詰まりませんか。ならば、ちょっと変わった? 展覧会へ行かれてはいかがでしょうか。

 場所は国立新美術館です。最寄りは千代田線の乃木坂駅です。(余談ですが、乃木坂あたりに実際に行くと「乃木坂46」がああいう感じのキャラクターになるのはよくわかりますよね)一二月一四日までやっています。

新国立美術館

新国立美術館

新国立美術館2

新国立美術館

 ニキ・ド・サンファルという女性をご存じですか。フランスの芸術家です。一九三〇年、フランスのパリで生まれます。父はフランス人、母はアメリカ人です。三〇年といえば、世界大恐慌の時代、生活が苦しかったからか、両親は米国に移住します。米国では各地を転々としていたらしいです。学生時代からモデルとして活動します。今回の展覧会でも、絵手紙で多く英語を使っています。米国に住んでいたからですね。今のEUでは英語が共通語です。またフランス人はEU成立以前は母国語を大切にしていましたから、見ていて「どうして英語ができるのだろう」と思っていました。

 ニキはその後フランスへ帰ります。女優になるための訓練を受けた後、精神的に不安定になってしまうのです。フランスでは他の芸術家と交友をもつようになります。そして、精神療法の一環として絵を描くようになります。この辺りの時代の作品から展覧会はスタートします。

 

ニキ・ド・サンファル展パンフレット

ニキドサンファル怖かった

 

 1,アンファンテリブル――反抗するアーティスト

 このパートでは、彼女をヌーヴェル・レアリスムの一員として認識させた作品が並びます。ヌーヴェル・レアリスムとは、「大量消費物や廃棄物を使用し作った作品で、第二次世界大戦後の工業化社会のリアリズムを追求する活動」だそうです。

 ニキには一貫して女性性が作品が通底しているのですが、この辺りの作品は過去にあった女性性の破壊をテーマにしています。

 大量消費物を塗り込めた彫刻のすぐ前にスプレー缶をつるして、それを射撃する「射撃絵画」であったり、伝統的な女性性を破壊していきます。かなり精神的に不安定だということがわかる作品群です。同時に、ドラゴンや神話など実在でないモンスターや蛇も作品に共通するモチーフです。

 会場では実際に射撃絵画を行なっている映像が流されます。絶え間なくなっているライフルの発砲音や激しい作風に、個人的にはやられてしまいました。「もしかしてこれをずっと見せられるのか」と少し後悔しました。

 

ニキ・ド・サンファル射撃絵画

ニキドサンファル射撃絵画

2,女たちという問題

 ブログを書くようになって一番の違いは、音声ガイドを使うようになったことです。本当は「きついな」と思う内容の作品はスキップしてもよいのです。が、音声ガイドを使ってしまうと、もったいないというセコい思いもあって、どうもずっと見てしまうのです。

 このブロックも前半はそういう感じです。彼女は(安直に書いてはいけないのですが)父親から性的虐待を受けます。たぶん、精神的不安定と女性性の解体、旧来の男性性への嫌悪はここから来るのだと思います。(ここがネットにもいる小娘のフェミニストと違うところです。あくまで嫌悪は女性を旧来の女性性に閉じ込める「旧来の男性性」に対してで、男性ではないのです)だから、色彩的にも、モノクロが基調であり、油絵の具も叩き付けるように塗ります。このブロックの前半も、女性性をストレートな彫像として作っていて、攻撃性は凄まじいと思います。が、なんだろう、芸術にある豊かさがないと言えば良いでしょうか。

 ただ、この後半のブロックからは一変します。

 それが「ナナ」のシリーズです。私の目的はどちらかといえば、このナナでした。これが見たいがために行ったようなものです。友人の女性の出産を祝うために作った彫像は今までのものとは違い、色彩も豊かで、見ていて和むようなものになりました。

 

ニキ・ド・サンファル、ナナ

ナナ

 壁に投射されている、ニキのインタビューではこのようなことを言っています。「『女性性』は閉じ込められている。もっと開放的にならなければならない。それは男性も一緒で、男性自身のなかの『女性性』も閉じ込められている」。その閉じ込められた『女性性』を表現したのがナナのシリーズです。ナナとは「娘たち」という意味です。ナナの姿は、純真無垢だった娘時代の女性をかたどったようであり、そのふくよかなシルエットからは土俗的で原始的なものを表現しているような気もします。

 特に母親が死んだときに作ったという、お化粧をしている彫像がよかったです。

 

ニキ・ド・サンファルのナナ2

日本初公開のナナ

 長くなってきたのであとは簡単に紹介します。

 ニキの名前を冠した美術館が那須高原にありました。九三年にできますが、残念ながら今は閉館してしまいました。その美術館を建てた、増田静江さんとの交友についての展示があります。その後は、彼女がその後に入る、精神世界についての紹介があります。

ニキ・ド・サンファルのブッダ

ニキドサンファル。ブッダ

 また、ここが小娘フェミニストと違う所ですが、(しつこい!)彼女は二人と結婚しています。ひとりは一六才のときの夫(なんか親元から逃げるための結婚だったと思ってしまうのはうがち過ぎ?)で、もうひとりが芸術家です。ジャン・ディンゲリーと言います。そのジャンが途中、他の女性に狂ってしまったらしいのですが、その彼宛に書いた絵手紙が幾つも展示されています。それがちょっとかわいらしいものでした。「今なにしてる?」「そういえばビートルズ最近聞いてる?」と質問攻めにする手紙が良いと思いました。

 

ニキ・ど・サンファル1

ニキドサンファル

ニキ・ド・サンファル2

表裏一体

 そして、彼女のまた代表作の一つ、タロットガーデンについての展示があります。タロットガーデンはイタリアのトスカーナにある公園です。ガウディの設計した公園に感動して、作りました。タロットカードをモチーフとして作られた作品群です。構想から二四年を賭けて作り上げました。その一部が展示されていました。中央に、蛇をモチーフした大きな像があります。「蛇の樹」という作品です。

 彼女は絡み合った蛇を見た日に、父親に性的虐待を受けたそうで、蛇というのはそれから彼女の重要なものになっています。

 木の幹の上で枝となった蛇が交差しています顔が先についているのですが、蛇の胴体、木の幹には、無数の小さな鏡が貼りつけられています。照明が当てられると、それが乱反射して壁という壁、物という物を照らし出して、様々な紋様に染め上げます。その像がすごかったです。

 ちょっとネットで調べたのですが、実際にトロットガーデンに行かれたか方も、「ジョジョ的な世界で面白かった」とおっしゃっていました。

 

 NHK日曜美術館、TBSのBS「ニュースバード」、雑誌などで紹介もされているようです。気になった方は、六本木でランチ、ウィンドウショッピングのついでに行かれてはどうでしょうか。個人的には後半の色彩豊かになった方が、良かったと思います。前半はキツかった。

https://instagram.com/p/-VuCZaAKg7/

ニキドサンファルパンフ

 

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