まさりんです。
「犬神家の一族」を見た。
1,基本情報
監督:市川崑
脚本:一瀬隆重
配役
野々宮珠世:松島菜々子
犬上松子:富司純子
犬上竹子:松坂慶子
犬上梅子:萬田久子
犬神佐武:葛山信吾
犬神佐智:池内万作
犬神小夜子:奥菜恵
犬神寅之助:岸部一徳
犬神幸吉:螢雪次朗
猿蔵:永澤俊矢
女中はる:深田恭子
等々力所長:加藤武
※他、ちょい役に林屋木久蔵(林屋木久扇)、中村玉緒、草笛光子、大滝秀治
2,概要
またwikipediaを見つつ、基本的な情報をチェックしていたのだが、この作品の映画化は三回あるらしい。一九七六年の市川崑、今回書く二〇〇六年版、そして一九五四年版というのも存在するらしいのだ。主演は片岡千恵蔵らしい。きちんと調べていないが、獄門島など金田一シリーズがその時期に多く作られていたらしいね。
二〇〇六年版は監督市川崑の遺作となった。
ストーリーは、必要なかろう。信州那須の邸宅で信州財界の大物犬神佐兵衛が死ぬ所から始まる。その莫大な財産を誰に相続させるかを遺言に記した。それは要するに「野々宮珠世に全財産を与えるが、珠世は佐兵衛の三姉妹の息子、佐清、佐武、佐智の三人から配偶者を選ぶように」というものだった。もともと折り合いの悪い三姉妹。ここから骨肉の争いが始まる。
金田一耕助は遺言を預かる弁護士古館に依頼されて信州へとやってくる。
3,感想
最後に市川崑のメッセージが出て終わる。「映画は所詮光と影だと思います」とあった。その通りで、「天河伝説殺人事件」はそれが遺憾なく発揮されていた。七六年版もそうである。今回の〇六年版でも、影が美しく入っていた。「天河伝説~」は以上に影が濃かった。もしかすると、それはバブル崩壊直後という時代が「光」を強くしていたので、対照的に「影」が濃くなったのかもしれない。
七六年は逆に時代の「影」の部分がリアルだったのかもしれません。高度成長期のひずみが現れたころであったから。
何か作品を作るという行為は必ず時代や社会に影響を受けるものである。
今回面白かったのは、いわゆる「劇画的な動き」だとおもう。
狂乱する犬神竹子(松坂慶子)を止めようとする、夫(岸部一徳)と娘(奥菜恵)。なぜか二人で一生懸命布団をかぶせようとする。それを竹子は振り払うのだが、娘は吹っ飛んでふすまにぶち当たり、ふすまが外れる。なんだか昔のアニメのようである。
結局この佐兵衛の意思を実行してしまった、三姉妹。事実を金田一は長女松子(富司純子)に告げるのであるが、そのときに松子は佐兵衛の写真を睨んだ後、目がくらみ、よろよろとよろめいて、やはりふすまにあたり、すとんと腰を落とす。そして「佐清に会わせて下さーい」と叫ぶ。
梅子(萬田久子)も息子佐武を殺されて発狂するのだが、はぜか近くのふすまに駆け寄って、ばんばん叩く。
こういう動きがとても多い。
陰影の強さと、演劇的な人の動きが、この作品の特徴だ。だからか、佐清役も尾上菊之助だったりする。そういう演出を受け入れられる人間がそろっていたのだろう。不思議に思ったのは、その当時上手だと思っていた、奥菜恵の演技がそれほど上手くないと感じてしまったことだ。
何よりも富司純子(ふじじゅんこと読むと思っていた)たち三姉妹の演技がすばらしかった。子どもを持つ女性の狂気がよく描かれていた。富がほしいように見えて、結局自分の子どもを覇者にしたいという、子どもを思っての行動だというところがこの作品の妙味であるが、それが十二分に表現できるキャストであったと思う。
このときもその後も、テレビでは松島菜々子は大女優として扱われるが、こういう演技をみると小童であると思った。もっとも、もう十年経ってるけどね。
あと、金田一って礼金を受け取ったっけ? 必要経費だけじゃないの。「止められなかったから」っていって、受け取らなかった気がする。どうでもいいけど。