震災以降、近所の家で立て替える家が増えている。
近くにあるアパートなのか、それとも旅館なのか、判然としない建物の解体が進んでいた。それが昼間ものすごくうるさいのだが、訳の分からない怒号が飛んでいて聞いていて不安になる。
「てめえ、なにやってんだ、こらぁ」
とか、何かが倒壊する音が近隣に鳴り響いたりする。
おいおい大丈夫か。親方は日大の出身者か、と言いたくなるが、個人的に日大には好意のあった女性が通っていたので、あまり強いことが言えない空気がある。
同じように、今日も同じマンションに住む中国人の男が元気である。
ひっきりなしに電話をし、友人を招いて大騒ぎをしている。
前にも書いたが、うるさくもないのにうるさいとクレームをつけられ、殺意を覚えるよりもましなのでそれはよい。
それにしてもいくつの男なのだろうかと想像する。
二十歳は過ぎていそうである。
我々はいわゆるロスジェネの始まりの年代である。二十歳過ぎて就職すると、本当に心理的にばらばらに人間関係を解体された年代である。平気で同窓会にいける人間をどうも好きになれない、四十代前半はそんな世代である。
だから、友人を招いて毎晩どんちゃん騒ぎなどしていない。
忙しくて、あえても数ヶ月に一回。年に一回だ。
「いやオレはしたけど」
あなたはエリートの方なんだよ。
だから、結婚したくない。まだ遊んでいたい。なんてことをはてなの匿名コーナーで読んだりすると、ちょっとほっとする。
われわれと違って、友人関係が解体されずに済んだんだな、と。
それならそれでよろしい。
みんな二十代半ばでさっさと結婚したからなあ。
先の中国人に戻る。
日本にもそんな時代があった。80年代まではそんな感じだったのだろう。
そこまでは日本も青春時代だった。
中国も今、青春を謳歌しているのだろうと、近所の中国人を見て思う。
その時代を超えて、人に言えない葛藤を抱えるようになると、いっちょ前の大人になる。どの国も、どの人間もそんな時代を謳歌する権限はあるからね。
それにしてもいつもはうるさがたの我がマンションの連中も、外国人相手だと遠慮するのね。