「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」が終了した。
11話では一年戦争前半の最大の戦い「ルウム戦役」の激戦が描かれる。
わざと負けたと見せかけたドズル・ザビ率いるジオン公国軍が、転進した。横に展開している連邦軍を引き裂くようにムサイの列が突っ込む。
と同時に、ジオンのザクが艦隊のわき腹に攻撃を加える。
モビルスーツの特性が遺憾なく発揮された。原作ではその優位性は、「戦車と航空機を合わせた存在」と表現された。ザクたちは戦艦ののど元に次々食い込む。連邦軍側も戦闘機を繰り出すのであるが、小回りが利く人型のモビルスーツにとっては「少々当てにくい的」にしかならない。
徐々に連邦の戦艦は削られていく。最終的に敵方の旗乗艦アナンケを攻撃したのは、黒い三連星のザクであった。アナンケから脱出したシャトルは補足され、敵総大将レビルは虜囚の憂き目にあう。
戦後、特にザクに騎乗したエースパイロットたちは英雄として扱われる。
シャアはそのなかでも象徴的な位置を占める。
それはジオンにとっても都合がいいからだ。開戦を決定づけさせた、ジオンの若手将校の決起、「暁の蜂起」にも中心的な位置で参加し、ルウムの大戦でも勝利の立役者になったシャア。これを政治的に利用しない手はない。戦意高揚に利用できるのである。彼は一気に少佐に上り詰める。ここで有名な早口言葉、「シャア少佐」が誕生する。
このことが理解できない人間たちがいた。
一方は黒い三連星。
彼らはレビルをとらえたのは自分たちなのにどうしてシャアの方が出世するのかが理解できない。
もう一方は、ガルマ・ザビ。
この坊やはシャアが出世することを、感情的に受け入れられない。
これが彼に悲劇をもたらす。
悲劇はそのシャアにも起こる。
それは喜劇といってもいい。
彼はもしかすると父を暗殺されたと「誤解」しているかもしれないと以前書いた。
同時にこのときに持ってしまった、いわゆる全能感が彼にも悲劇をもたらす。
それは見ようによっては滑稽でもある。
話はそのシャアにドズルから命令が下り、作戦のためにサイド7に向かう途中で終わる。
そのサイド7に、運命に導かれるようにホワイトベースのクルーが集まってくる。この時点でサイド7に住んでいるのは、アムロ・レイ、カイ・シデン、フラウ・ボゥ、ハヤト・コバヤシ、カツ・レツ・キッカ。そこに上司の勧めでやってきた医者の卵、セイラ・マス、自身の運転するグライダーで父親とやってきたミライ・ヤシマ、そして新造艦ホワイトベースに乗ってきたブライト・ノア。
そこにシャア・アズナブルがやってくる。
本編はここから、シャア・アズナブルの部下である二人に偵察を命じる。
偵察なのに目立つモビルスーツでいかせるシャアの若気の至りのせいか、制止するデニムの命令を無視したスレンダーの暴走によって、物語は始まる。
この「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」の「シャア・セイラ編」は一貫して誤解がテーマで会った気がする。
最後の誤解はシャア自身がもった自身への全能感、万能感だろう。
ここから作戦の内容もあいまって、シャアはアムロ・レイ搭乗のガンダムとホワイトベースに固執し続ける。しかも独力で掃討しようとして、無茶をし続ける。おそらくホワイトベースを倒す絶好の機会は、ガルマとの共闘であっただろう。ホワイトベースもガンダムも瀕死であった。クルーの熟練度も高くなく、しかもシャアは事前にホワイトベースの位置に勘づいていた。
ホワイトベースは身動きの取れないドームに身を隠し、ガルマ部隊が来るのを待っていた。位置をキャッチしていて、戦力的に勝っていたガルマたちは袋叩きにする絶好の機会であった。
だが、万能感からか、その機会をガルマ暗殺に利用する。
ホワイトベースの正面にガルマを誘導して一斉射の的にした。
このミスが一番大きかった。
その後ホワイトベースのクルーは、ランバ・ラルや黒い三連星との死闘やミハル・ラトキエの悲劇、アムロ個人でも母との再会と別れ、マチルダの死などを通じて、技術的にも人間的にも進化する。
再び、南米ブラジルのアマゾンにある連邦軍基地ジャブローでシャアはアムロたちホワイトベースと対峙していくのだが、一筋縄ではいかないくらいの存在になっていた。
「さらにやるようになった」
は本当の実感だろう。
この一連の悲劇が、「Zガンダム」や「逆襲のシャア」まで続いていく。
ここからシャア・アズナブルは挫折し続けるのである。
「こんなはずじゃ」という自己否定から、最後「逆襲のシャア」では帳尻あわせのために、アクシズを地球に落とすことを計画する。
全体的な話はこの話を連結すると、見事にアムロやホワイトベースのクルーの成長の話にシャア・アズナブルの喜劇のような悲劇を加えることになった。
スターウォーズもこういう話の構造を持っている。旧三部作に新三部作を連結すると、話の中心線が息子のルークの話から、父親のアナキン、ダースベイダーの話に転換する。その転換に似ている。
アナキンの悲劇も「誤解」が基調になっている。恋人を作ることも禁止されているが作り、その恋人アミダラが死ぬという予言めいた夢を見る。暗黒面に落ちれば彼女を助けられるという「誤解」。自分が実力があるのにパダワン(弟子)からマスターに昇格できないのは、ジェダイ評議会が自分を嫌っているからだという「誤解」。それらの誤解を利用して暗黒卿のシディアスがアナキンをあおっていくのである。
シャアの悲劇は決して修正されることのない「誤解」に基づいていた。
忠告をしてくれる妹も最後は匙を投げた・・・・・・ように見える。動向は探っていたみたいだが。
今回も見ながらそんな様々なことを考えてしまった。
とこのタイミングで、youtubeではガンダムの配信が始まった。
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