今日の十分日記

今日の十分日記

原点回帰の雑記ブログ。十分で書ける内容をお届けします。十分以上書くときもあるけどね。十分以下もあるし。

多様性の時代――十分日記

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シロクマくんからお手紙つきました。

食べようと思ったけど、消化不良になりそうだからやめました。

p-shirokuma.hatenadiary.com

anond.hatelabo.jp

 

下の記事について、シロクマくんがお手紙を書いたみたいです。

元の記事も、ブックマークも読みました。この記事が否定されてしまうなんて、ちょっと驚きました。なんだかんだいって、みんな幸せに暮らし、幸せな人々しかみないで生きているんでしょう。こういう人間が「自分は不遇だ」だと思っていたら、大間違いです。だから、もうはてなは卒業ですよ。

みんな忖度をしているようですが、忖度の方向が変です。

 

この一年くらい、シロクマくんと同じようなことを半強制的に考えさせられました。そして、同じようなシロクマくんと同じような結論に至りました。

 

最近でもないですが、ZARDのドキュメンタリーがありました。

なにか作業をしなければならないときに、音楽を聴きたいということがありますね。そういうとき、このドキュメンタリーを流します。画面を見なくて良いからです。

ZARD「負けないで」という曲があります。私たちの年代(40代半ば)が若い頃に流れていた曲です。なぜかその当時からこの曲を聴くと苦々しい思いがしていました。

我々のすぐ下の世代からは「もういいよ」「自分のままでいて」「頑張らないで」「暴力は止めよう」「あなたがダメなのは全部大人のせいだよ」というメッセージが頻繁に出されていました。

我々は、「負けないで(勝負からは降りるな、絶対に)」「頑張って」「ぶっとばすぞ」「盗め、見て盗んで成長しろ」と言われていました。

坂井泉水は美人です。美人に限らず、女の人に「負けないで」と言われたら、勝負から降りられないのが、我々の世代の男です。シロクマくんの発想には、そんな同世代の言葉の匂いがしました。私もそんな発想をするので、もうこの世代の宿痾ですね。

 

そんな発想から結論を先に書いてしまえば、

「多様な社会といっても、それは社会にとって有用な形であるわけで、文字通り『全員が多様で活躍できる』わけではない」

ということです。

結局、「多様性」とっても、多様な人種、文化を持つ人間を「プレ・近代社会」が受け入れ、そこから才能をある人間を引き出すための方便だということです。近代社会では、近代国家における国民や大衆(オルテガ的な意味、つっこむな勉強中だ)に多様な人間は受け入れられませんでした。

同じ言語を話し、文化的なバックボーンを持つ者が国民・大衆として受け入れられ、そうでないものは冷や飯を食わされる。だから、アメリカのように無味無臭だった国は人々の希望になったわけです。ものの本によれば、アメリカでも60年代には貴族的な階級が登場したらしいです。ケネディ家などもその一つらしいです。この時点で、アメリカは自由の国ではなくなっています。

 

 

さて、シロクマくんが言う「資本主義的上昇志向」から抜ける装置だったのが、宗教でした。日本人は出家することで、社会のくびきから脱出することが保障されました。この機能の一部を補完したのが臨床心理士です。

ただし、シロクマくんが自覚しているように、それは「資本主義的上昇志向の渦」に向かって押し出す役割です。だから、「普通」と「異常」の線引きが必要なのです。自分が「異常」だと言われて喜ぶ人間は少ないでしょう。こうして恐怖を持って、「普通」に押し出すのです。

カウンセリングは嘘でも本当でも構いません。薬が効こうが効くまいがどちらでもいいのです。「普通」になれば。

こうして近代では近代的人足を補充しました。

 

 

シロクマくんがはじめの方で書いていた、コミュニケーション能力が高いというのは多様な社会を構成する上で非常に必要です。考え方が違う人々が集うのですから、自分の考えを表明し、他人の考えを理解する(受け入れなくてもいい)のは必要なスキルです。これがないと、社会が動きません。若い人はそれに対応すべく無意識に動いています。

わかっているのは、今まで優秀だと思っていた人間の一部と、いままで不遇な目に遭っていた人々の一部が入れ替わるということです。

 

必要なのは、どうやって逃げるかではなく、どうやってこの社会で生きていくのか、個人個人の生き方を誘導する機能なのかもしれません。

 

今回のコロナ騒動において、専門家会議でリードしていたのは医者でした。

そして、出してきた方針が各国とも、社会性を欠いた方策でした。ロックダウン、つまり、社会全体を入院、隔離するという方法です。

一番驚いたのは、この方法に人々がたったひと月で音を上げたということです。三月から入れたら、二ヶ月です。

私が20代に経験した入院期間の最長は5か月でした。一番最初の入院は普通の市民病院で、それくらいかかってしまいました。この期間、病院から一歩も出ず、病室に籠もりきりでした。それから20代に何度か入院しましたが、平均して2か月、それ以下ということはありませんでした。

人々が一ヶ月で音を上げたのを見て、はじめは「根性ねえな」と思っていました。しかし、次第に「自分がおかしかったのではないか」と思いはじめました。

自分が食らっていた治療方法が非人道的であり、異常な行為だったのではないかと。そのせいで、少々生きる気力というものがない気がします。分かっていても、力が湧いてこない。どうせがんばっても、「またどうせ入院させられて人生を棒に振るのだ」とどこかで思っている節があります。

 

医療というのは超近代的な行為です。

一度こういうパンデミックが起き始めると、再び同じようなことが起こります。

精神科医の働き方と同じように、やり方がずいぶんと変わるかもしれませんね。

 

普通からいかに逃げるか、ではなく、その人に合わせた形で社会に如何に戻すか。

ムリだと思いますか、シロクマくん。

そう思うなら、その椅子を後進に譲りなさい。

もうそういう年齢ですよ。

 

最後に、なんだかニヒリスティックな視点で、最近の若者に対しての手厚い補助を見てしまうと言う話をします。どうも逆「まけないで」の世界を見ている気がします。手厚い補助をして、「社会=大人」が若者を飼い慣らしているような気がするのは、私が老害だからでしょう。

この騒ぎが我々の世代で起こったなら、大学生が困窮しているのを、テレビで芸人がせせら笑うのが頻繁に流れたのでしょう。

 

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