お題「#おうち時間」
おうち時間。映画を見ましょう。本を読みましょう。
1,サブタイトルが下手
イップマンシリーズはサブタイトルがつきます。今回の三作目は「継承」。
一応、最終戦の相手を考えると、「継承」で構わないのですが、あらすじを考えると、「夫婦」とか、「家族」とか、「一番大切なもの」が良いと思います。「一番大切なもの」は最終戦の一番最後の台詞です。
「序章」(一作目)は分かります。しかし、二作目になると「葉問」と、自身の名前がサブタイトルになります。BOOWYの「BOOWY」みたいですよね。でも、どうして二作目が「葉問」なのかはちょっとわかりません。二作目は「逆襲」とか「苦闘」とか、「友情」とかの方が合っている気がします。このシリーズはサブタイトルの付け方がなっていません。こういう付け方の場合、デビュー作か、「名刺代わりです」と自分で差し出す作品ですよね。どちらかというと、一作目の方が「葉問」にあってます。
2,あらすじ
1950年代の香港。イップ師匠はすでに一目置かれる存在になっています。
皆が集まる食堂には詠春拳道場専用の席も用意されるようになりました。
同じ香港で武館を開いている、とある師匠の元弟子が悪事を企てます。西洋人に頼まれて、小学校の土地を買収しようとしているのです。その西洋人を演じているのがマイク・タイソンです。元弟子は造船をしているのですが、その社員に命じて小学校に嫌がらせをさせます。
小学校にはイップ師匠の子どもも通っています。警察は、西洋人絡みだということで、腰が引けています。イップ師匠は弟子と共に、警護を買って出ます。
元弟子は地下闘技場も運営しています。その上がりを西洋人(マイク・タイソン)が持って行きます。そこで詠春拳の武館を開こうとしているものがいます。彼の名は張天志(チョン・ティンチー)。普段は車夫をして、男で一つで息子を育てています。その息子も、かの小学校に通っているのです。
なかなか地上げが達成できないことに業を煮やした元弟子は、イップ師匠と張の息子をさらいます。それをイップ師匠が助けに来るのですが、そこに息子をさらわれた張もやってきます。胴元がやらかした事件。張の葛藤が始まります。
3,奥さんが可哀想
相変わらず、八面六臂の活躍をするイップ師匠は、妻をないがしろにします。その裏で、妻は病魔に襲われます。
ところで、妻はイップ師匠よりも長身長なのがおもしろいところで、中国では「最萌身長差」と呼ばれているようです。ちょっと奥さんは怖いところがあって、序章ではイップが詠春拳で戦うのを好みません。
この映画でも、子どもがさらわれ、取り返したときに、イップ師匠をぶん殴ります。もちろん、イップ師匠が悪いわけではありません。
とにかく、このシリーズは奥さんが可哀想でならないのですが、可哀想さに拍車がかかります。
4,アクション
イップ師匠vsマイク・タイソン、イップ師匠vs張天志というのが今回の見所です。
この「継承」の後に、イップ・マンの外伝として張天志の物語が作られます。金のために張は元弟子の依頼を受けて、戦いに行きます。ですが、「そっち?」と思ってしまう相手と戦います。呆気にとられました。
最後も、何らかの形で敵方に雇われてイップ師匠と戦うのかと思ったら、「そうなんだ」という展開を見せます。外伝は既定路線だったのかもしれませんね。
さて、前作ではサモ・ハンとの戦いがメインだと書きました。
本来なら、マイク・タイソンとの戦いがメインディッシュになるはずでした。本当はマイク・タイソンが負けた方が良いのでしょうが、おそらくそうもいかず、引き分け。
演技ができないタイソンに合わせるのが大変だったようです。演技? 演舞? で戦うのと実践とは違うので、どうしても動きが地味に見えてしまって、消化不良でした。
張天志(マックス・チャン)との戦いで、イップ師匠は最後、「ワンインチパンチ」を見せます。ブルース・リーが見せる技ですね。
これを師匠である、イップ・マンも使って見せます。
「おおう」という声が出てしまいました。
5,実際の話
悲しいかな、これは映画のお話し。かなり、実際のイップ・マンの話から逸脱させているようです。監督などの構想を盛り込んでいます。
奥さんは、香港ではなく、仏山で死にます。この頃には香港と大陸は行き来ができなくなっていまいます。この作品で出た子どもは他の女性との間の子どもであるようです。これは仕方のない話です。
6,奥さんと闘いと
奥さんに結構感情移入してしまう人もいるかもしれませんね。アクションと奥さんと、この二つがこの映画の見所だと思っています。
一作目で、イップ師匠は結構奥さんの尻に敷かれています。中国の、なんというか「大人(たいじん)」と呼ばれる人々は、結構恐妻家が多いそうです。大人とは成功者くらいに思っていて下さい。ただの金持ちではないです。
7,繊細な描写
この設定が少しだけ帰ってきます。病院でイップ師匠と奥さんが待っているとき、イップ師匠が新聞の記事を見つけます。
「とある人が言いました。『そこにいる人のなかで奥さんが怖い人は、あちらに移れ』。みなスゴスゴと移動しました。一人だけ残りました。その者に問いました。『お前すごいな。奥さんが怖くないのか』。『だって、うちのがそこにいろって言うんだもん』」(だいたいこんな話)
という逸話が書いてあって、それを読みます。「私も怖い」と奥さんに聞かれ、イップ師匠は「たまにね」と答えます。絶対に、いつも怖いのだと思います。
何気ないシーンにこんな二人の関係が浮き彫りになっていて、そんなところが良い感じな映画でした。
8,低い評価をする人は描写が見きれていないのかも。
イップ・マンがまじめすぎて、人間味がなかったと評価する人がいるそうです。いや、上の新聞の逸話には、いつもなら闘争心をかき立てる内容の記事があります。それをあえて無視して、奥さんの横に寄り添おうというイップ・マンが、きちんと描かれています。いつものイップ・マンならば、私事よりも、公のことを優先したでしょう。そんな面は意外でもあります。
繊細な描写が幾つかあって、それを見落とすと分からないようになっています。
小学校を警備するときに、煙草を吸おうとして、校舎を見た後に止めます。子どもがいるところでは吸いたくないと思ったのでしょう。そんな描写もあります。
今までのイップ・マンと違って、派手な武闘シーンだけを追っていても、理解できない繊細な描写も今作品の持ち味だったりするのです。