今日の十分日記

今日の十分日記

原点回帰の雑記ブログ。十分で書ける内容をお届けします。十分以上書くときもあるけどね。十分以下もあるし。

「第三回 文章スケッチ~縁日~」応募します。

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 まさりんです。

 

 

 「第三回 文章スケッチ」に応募します。またもやギリギリ。本当に失礼しました。

novelcluster.hatenablog.jp

 

 その神社は丘の上に建っていた。

 丘の中途には高層マンションが建ち並ぶ。マンションを縫うように細い道が上がったり下がったりしながら、丘を巡っている。道は車一台が通るのがやっとで、道の片側にだけガードレールつきの歩道がついている。

 歩道を白人の外国の家族が歩いて行く。三〇代半ばの父親は、一〇歳に満たないくらいの娘の手を引いている。父親はポロシャツ、娘はTシャツだが、ともに黒い。二人ともデニムである。マンションの外壁はみな白を基調としているが、経年劣化でみな黒ずんでいる。空ばかりが青く、みな彩りはモノトーンである。ときおり、言い訳程度の緑が覗く。後ろからいく母と息子は、母は白いTシャツ、息子は薄い青のポロシャツを着ていて、やはりデニムである。四人とも、周囲のモノトーンに溶け込むような感じがする。

 途中で右に下りていく坂があり、歩道が右側から左側にシフトする。左側の歩道に移ると、正面からベビーカーを押す、三〇台前半とおぼしき白人の父親がやって来た。父親はベージュ色の半ズボンに、灰色のポロシャツを着ていた。細い道は上りながら左に折れる。道なりに進むと神社が現われる。急に視界に緑が溢れてくる。主に楠が多い。神社の入口に向かって、石の柵に沿って進む。神社の入口の方から、緋色の小紋を着た二〇代の女性が出てくる。脇には男を従えている。

 神社の入口の右手には巨大な石柱があり、神社名が書かれている。石の柵が石柱の後ろにあり、その奥に神社の由来が書かれた、看板が立っている。石柱の前には青く「三つ巴」が染め抜かれている大きな提灯が下げられている。入口正面に向き直ると、石造りの大鳥居が立っている。その奥には屋台が建ち並び、モノトーンの住宅街からは一変して、多彩な色が目に飛び込んでくる。階段を数段昇り、石畳を数メートル進む。鳥居をくぐる。石畳はそこで二つに分かれる。左手には小さな社がある。正面は本殿へと続く。

 正面から、腕を吊った山高帽を被った老人と赤子を抱えた女性の二人が歩いてくる。その後ろには五〇代前半のジョギング中の男性がやって来る。男性の頭髪は禿げ上がっている。そのまた後ろには夫婦がいる。夫はベビーカーを押している。人々とすれ違いながら進む。

 本殿へと続く石畳の脇には屋台が並ぶ。各屋台の作りは大体一緒である。大きなビニールの屋根が風雨から商人と商品を守る。屋根には横断幕が下がり、横断幕には各店の商品名が大きく書かれている。屋台のなかは様々で、鉄板を使う店では、香ばしい匂いを煙とともにあげている。石畳の左には赤い幕に黄色い字で「台湾屋台 焼きビーフン」、黒地に白い字で抜かれた「ビッグ串焼き」、ピンクの幕に黒い字で「バナナチョコ」と書かれた屋台が並んでいる。右手には水色の地に白い字で「やきそば」、青地に白い字で「鮎の塩焼き」、パラソルの下でクーラーボックスのなかに氷水を入れて、そこにビールなどを入れて売っている店がある。左手の串焼きとバナナチョコ屋の間に金魚すくいがあった。白い水槽に黒や赤の金魚が泳いでいる。五歳くらいの女の子が妹を連れて挑戦している。

 本殿の前の手水で手と口を清め本殿に入る。左手には和歌山県観光協会が白いビニールのテントを張り、地元のPRをしている。右手は社務所で、巫女さんが眠そうに座っている。

 賽銭を入れ、三本下がる鈴の緒のうち、中央の緒を振った。型どおりに参拝をすます。本殿のなかには木の椅子が数脚ならび、中央には高い足に乗っかった大きな神鏡が立っている。天井は正方形に木で区切られている。なかには植物の絵が描かれている。二帳の灯籠が天井から提げられている。

 本殿の前の文をくぐり直すと、右手に手水、左手に由緒書きがある。徳川吉宗がこの地に神社を移した、とある。

 石畳はまっすぐ進めば元の入口へと続く。左に進めば、別の入口へと続く。やはり石畳の左右には屋台がならび、その右側の奥には盆踊りの櫓が建ち、その奥にも屋台がある。石畳の右側には、濃紺の暖簾に「やきとり」、黒い幕に赤い字で「焼きそば 肉入り」、赤い幕に黄色い字で「ドネルケバブ」、白地に黄色で「キャラクターすくい」の屋台が並ぶ。キャラクターすくいとは、スーパーボールすくいのゴムキャラクター版である。流れる水槽にゴムキャラクターが流れていて、それをすくう。石畳を挟んで左手には「わたあめ」、「お面屋」、「スーパーボールすくい」の店がある。

 本殿の前から左の石畳に進もうとすると、右手から三人連れの中国人がやってくる。正面からは男性の神職の人が六〇絡みのご婦人を連れてくる。神職の男性は白い半襦袢に黒い袴を着ている。「着替えはこちらでお願いします」と本殿の方へとご婦人を誘う。地元の婦人会の人だろう。元の入口の鳥居の方から三人の女性が歩いてくる。濃茶の半被を着ている。黒い衿には白字で町会名が書かれている。黒い股引、足下も黒い足袋である。引っ詰め髪には白いねじり鉢巻きをちょこんと乗せている。

 様々な年代、国籍の人々が、銘々の個性を服装と色、言葉で表現している。一色ではないが、このあたりに住むという共通点のみでこの場に集まっていた。人々とぶつからぬよう、イチョウを周りながら左手に曲がる。

 わたあめ屋には当世人気キャラクターがプリントしてある長いビニール袋がさがっている。妖怪ウォッチ、リラックマ、ぐでたま、キティ、ポケモン、アナ雪などがプリントされ、ピンク、黄色、青など、色とりどりの袋がさがっている。

 キャラクターすくいでは小三くらいの男の子が挑戦している。赤を基調としてピンクや黄色い人形が流れる。

 正面には中年女性が二人入口へと向かって歩いている。水色の服を着たおかっぱ頭の女の子が、薄い色のデニム、青色のパーカーを着た父親とワインレッドの半袖、白いチノを履いた母親に連れられて歩いてくる。娘はキャラクターすくいに引かれて、そちらへ歩いて行く。スーパーボールすくいはすくったボールの数で、色々なキャラグッズがもらえるらしい。ゲットした三歳くらいの男児が、ホクホク顔で歩いて行く。

 右手の「キャラクターすくい屋」と「水ふうせん屋」の間、左手の「スーパーボールすくい」と「ミニカステラ屋」の間に大鳥居がある。鳥居は大きく石造りである。鳥居の脇から右に入ると、広場に出る。広場は土が剥き出しになっている。広場の端に「太田遊戯場」と赤地に黒い字で書かれている射的場があった。射的場の奥には赤い毛氈が敷かれた段があり、景品が乗っている。屋台の中央には白色の大きな電球が吊ってあった。三〇代半ばのソフトモヒカンの恰幅の良いお兄さんが「太田遊戯場」の主人で、紺色のTシャツ、黒いズボンを履き、前掛けをして座っている。

 客にはダブルデートといった風情の二〇代後半の二組がいた。灰色のシャツにジーンズの男は太りすぎていた。その彼女は肩甲骨あたりまである髪を左側に寄せて束ねていた。灰色のワンピースの下はレギンスだった。もう一人の彼女は白いTシャツに青いデニムだった。彼氏は痩せていて、彼女とおそろいの服で、腰に赤と黒のチェックのシャツを巻いていた。景品は全く取れないのだが、ソフトモヒカンの店主が大きな声を出して盛り上げていた。

 「太田遊戯場」の奥には大きなイチョウが立っていた。区の天然記念物だった。その奥には白いとんがり帽子のようなテントが並んでいた。「わらび餅」、「赤坂ビール」など、地元商店の出店があった。

 「太田遊戯場」の正面には盆踊りの櫓が建てられていた。周囲には紐が張られていて、紅白の提灯が等間隔に吊られている。二階建ての櫓の上では、白地にジャパンブルーで簡単な模様が染められている浴衣を着たおじさんが二人、ぐったりとして寝ていた。

 帰ろうとすると、脇の柵の上で、猫が居眠りしていた。

――了――

(三一七六文字)←Word調べ。

 

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