これも少し前に見た映画だ。
なんとなく感想を書ききらないで、放置していた。
どうも年を食ったらしく、こういう映画が好きになってきた。
というより、若い頃から好きか。
どういう類の映画か想像しやすくするとすれば、「山の郵便配達」的な映画だ。
展開のスリリングさというより、映像に力を入れる映画だ。
里山が舞台で、しかも制作が「踊る大捜査線」や「ALWAYS 三丁目の夕日」を作ったrobotという制作会社だったので興味を持ってみた。
この映画は、都会暮らしに疲れて、故郷の東北の山村に帰ってきた女性が主人公だ。主人公いち子は橋本愛が演じる。小森という山村は近くにスーパーもない。買い物は役所近くの農協のスーパーでする。他の小森の住人はみな隣町の大型ショッピンセンターまで行って買い物をする。自転車しか持っていないいち子はそこへは行かない。とは言ったものの、基本的に自給自足の生活なので、物を買うこともあまりないみたいだ。それにしても、いち子は綺麗な服着てるね、とか無粋なことを言ってはいけない。きっと、都会暮らしをしているときに買ったのである。
ウスターソースから、パンから、カモを絞めることまで、すべて自分の手で行う。米も育てる。甘酒も造る。木の実を拾い、草を取り、自分で畑を作り、すべてをまかなう。
あまり裕福でないように見えて、その生活は豊かである。
しかし、大変だ。
回想シーンで、母親である福子(桐島カレン)との思い出が出てくる。
たいてい、なにか料理を作っているシーンだ。
たまにそのときどきの恋人なんかも出てくる。
なんというか、この母親がいち子がさらに若い頃に失踪している。
みな自分勝手に生きているし、状況に合わせてというより、状況に流されて生きている。母福子もそうだが、いち子もそうだ。いち子には後輩である、ユウ太(三浦貴大)も同級生キッコ(松岡茉優)もそうだ。だが、いち子には迷いがあり、他の若い人は主体的に選び取って、小森の半自給自足の生活を送っているように見える。
大人になると、「成立していればいい」というように、ちょっと鷹揚に物事を見られるようになる。潔癖に生きるというのは、若い頃の特権である。そういう青臭さがよく出ている。
若くなくとも、若くとも、人生に少し迷って、空回りをしているなと感じている人におすすめである。ほんの少しだけ、気分が楽になる。