今日の十分日記

今日の十分日記

原点回帰の雑記ブログ。十分で書ける内容をお届けします。十分以上書くときもあるけどね。十分以下もあるし。

短編小説の集い お正月特別ワークショップ「文章スケッチの広場改」

 

 まさりんです。

 今回は月末恒例の短編小説の集いに参加します。

 今回の試みは、かなり試験的ですな。主催者様、よろしくお願いします。

 先に書きますが、ちょっと文字数がタイトすぎました。「五〇〇字程度」の「程度」に甘えました。

novelcluster.hatenablog.jp

1,スケッチ二〇一七 ・ 一 ・ 三 神田明神

 神田明神よりもお茶の水駅寄りの、「湯島聖堂前」の交差点を右折すると、片側二車線の道路が、今年の正月は封鎖されていた。神田明神よりの二車線には初詣の参拝客がごった返していた。例年より人の数が多い気がした。人の塊を見たカップルが、「帰ろう」と回れ右をした。

 明神様はちょうど小高い岡の上に立っている。列は明神様を少し行き過ぎたところ、岡を少し下ったところで折り返していた。岡を道なりに進むと秋葉原万世橋あたりに続く。これまでの初詣の列は明神様の大鳥居から岡の下まで一列に並んでいた。

 列の最後尾の位置は例年より手前であった。その理由は進んでわかった。列は岡の下、万世橋から登ってきた人々と、御茶ノ水駅から来る人々の二系統になっていた。2つの列が明神様の正面で合流するようになっていた。岡を登る人々は駅から来る人々より少なく、折り返しがなかった。駅から来る人々は、先の位置から湯島聖堂前の交差点で折り返し、明神様入り口まで戻ってくる。

 明神様の入り口には大鳥居があり、拝殿に向かってゆるい坂を上る。青緑色の大鳥居の先も人の頭が連なっていた。並んでいる人々が一斉にスマホで写真を撮った。

 車道を挟んで明神様の反対には、青銅の緑青の瓦屋根が見える。明神様の並びにはビジネスホテルやビルがある。ビルの一階にはセブンイレブンがある。交差点のはす向かいには東京医科歯科大のキャンパスがある。

 並んでいるとき、人々、特に若い女性は、いつもより早口でしゃべる。四列渋滞を作るように言われるが、列が進むたびに少しずつ、右側二列に空隙ができる。老夫婦が並んでいて、老爺の方が足が悪く、どうしても間ができてしまう。しかし、誰も文句を言わず、割り込もうともしなかった。(七一六文字)

 

2,人物造形

性別 男

年齢 二十五歳

職業 サラリーマン

特性 ナンパ師。だけどもうやめたいという気持ちに気づき始めている。

※ナンパ師、二十五歳というところを自分と正反対にしました。

 

3,神田明神前を歩く。

 人混みをすり抜けるように、スグルは歩いて行く。「湯島聖堂」の前の交差点から右手を見ると、車道は通行止めになっていた。片側二車線の車道参拝客が蛇行していた。

「止そう。帰ろう」と前の男が言って、Uターンしようとした。スグルは素早く女をチェックする。

 交差点から岡の中腹にある、列の最後尾につける。来たことを後悔した。後悔しながらも、目は女を探し、耳は女たちの会話を盗んでいた。

 母親には数え二五の厄年だから、参拝しろと勧められたのだ。

 四列縦隊の前にはOLらしき二人組、そして右斜め後ろにも若い女がいて話していた。ろくな話をしていなかった。前のOLは同僚の噂話、後は紅白の星野源の話だった。スグルとて会社員だが女の果てのない愚痴に付き合う気にはなれないし、紅白なんて中学卒業以来見たことがない。それになんだか早口で興奮気味に話していて、スグルには気色悪かった。

 折り返し地点近くで左手を見ると湯島聖堂の緑青の瓦が見えた。正面の湯島聖堂前の交差点のはす向かいには東京医科歯科大のキャンパスがあった。無機質なビルと雄大の聖堂はどちらも、「お前なんか関わりがない」と言っているようにスグルには感じられた。

 折り返し、ビルの一階に入るイレブン、マンションの前をレジはゆっくりと流れる。流れに隙間ができていた。スグルが理由を探るように見回す。流れに遅れて老夫婦が歩いていた。夫の足が悪いらしく、妻は後から手を添えていた。スグルは少しだけ羨ましかった。

 明神様正面の大鳥居近くまで来た。そちらを見るとまだうんざりするくらい人の頭が連なっていた。大鳥居の左脇にある甘酒の老舗で、甘酒を飲んで帰ろうか、とスグルは迷った。

 正面には別の流れがあった。秋葉原方面から丘の上の神田明神へ続く人々だった。順々に警備の警察官が人数を切って大鳥居の方へ進めていた。

 スグルは正面の人混みに意外な人を見た。

 その人はマユミといって、スグルが大学生の頃に不倫していた女だ。マユミは夫とおぼしき男が横にいて、真ん中に小学生くらいの男の子がいた。

 子どもの歳から推量するに、つきあっている頃にはすでにいたはずだ。

 なんだか、自分の過去の恋、数だけは誇れる下らない恋と決別したい気分になった。

 マユミ一家は警備に促され、鳥居に吸い込まれていった。

 「今年こそは変わろう。厄払いしよう」

 無理だろうな、と思いながら、人々にもまれながら本殿に向かって大鳥居をくぐった。(九九五文字)

 

※本当は、スケッチしたものに、そのまま人物の動きを足してほしいというのが、主催者様の意図だったのかもしれませんが、それだとちょっと不自然になってしまうので、スケッチを生かしながら描き直しました。

 

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