今日の十分日記

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原点回帰の雑記ブログ。十分で書ける内容をお届けします。十分以上書くときもあるけどね。十分以下もあるし。

「サンシャワー」東南アジアの現代美術ーー十分日記39

 

ジャコメッティの展覧会を新国立美術館で見たときに、変な写真と出会った。黄色く塗られた足をした人間がたくさんの提灯を身につけて、南国であろう海辺に立っている。

この写真に妙に惹かれてしまった。

 

sunshower2017.jp

こちらのトップページの画像である。

 

いつか見に行こうと思っていた。昨日都心に行く用事があったので、そのついでに足を伸ばした。

「サンシャワー」とは天気雨のことである。この地域のエネルギーと歴史を同時に表現している言葉だ。

 

ご存知のとおり、日本も短期間統治したが、東南アジな地域は長年欧米の植民地であった。

それが独立するのであるが、当初、民主的な国家とは言えない状況であった。

 

独立後、東南アジアの人々は民主化を勝ち取るために戦った。

芸術家たちの作品にもそれが反映されていた。

 

民主化運動で犠牲になった大学生をモチーフに作った、「青い10月シリーズ」(ワサン・シッティケート)である。青い背景に、東南アジア系の若者が首をくくられたり、ぶたれたり、虐げられている大きな六枚の絵が壁に並んでいる。

その前に、屹立した股間をした木像が無数に並んでいる。それは自分を模した物だそうだ。首からはプラカードを提げている。プラカードには政治的なメッセージが書かれる。

絵には、詩のようなタイトルが付けられていた。

「夢はいかなる価値より高い」

「今日まだお前の恥ずべき行為を自慢に思うなら、古いネックレスを私から奪いに来なさい」

「国のアイデンティティーのために」

・・・・・・

これは実際に起こった事件を元にして書かれた絵である。その事件の当時、流行った歌謡曲の歌詞をタイトルとして当てたそうだ。

 

部屋の中央には廟のようなものがある。廟は高さが二メートルの円柱である。壁には赤い蝋燭と、遺影がある。蝋燭と遺影がセットになって、無数並んでいる。

(ここまで書いてくるとお気づきと思うが、今回は写真をとってきていない。作品をじっくり見たかったのと、『どうせネットで画像くらいあるだろう』という侮りがあった。後悔している)

 

政治的なメッセージが強い作品が並んでいるこの部屋。

「情熱と革命」というセクションであった。

 

東南アジアは長く欧米の統治下にあった。

要するにブラック企業に務めているのと一緒だ。

そりゃ苦しい。

だが、逆に言えば自分で判断し、行動する必要もない。

「自分」というものを感じなくてもいい。というより、感じることを禁じられる。厳しい新人研修も、この「自分」を消すために行われる。

 

統治から自由になる。

ということは、状況が逆になることを示す。

自分で考え、「自分」というものを意識せねばならない。

病気をしたりすることもそうであるが、良い年齢になって、「自分」が揺らぐというのは非常に苦しい状況だ。

 

東南アジアの芸術を見ていて思ったのは、そういったアイデンティティの揺らぎを皆が体験していたということだ。

全身を黄色く塗った人も、そうして自信の黄色人種としてのアイデンティティを確認するための行為であった。リー・ウェンの「奇妙な果実」という作品だ。実際にリー・ウェンがまとっていた提灯が展示されていた。

 

政治的な訴えだけがアイデンティティを確認する行為ではなく、日常生活や自身の文化を見つめて見つけるものだってある。展覧会は四つのセクションに分かれる。最後の「日常の生活」が個人的には一番面白かった。

というのは、「黄金の涙滴」という作品を見ることができたからだ。

www.imgsta.com

さすがにこの作品の情報はあった。

これはアリン・ルンジャーンという、タイ出身のアーティストの作品で、ベニス・ビエンナーレという万国芸術祭? に出展された作品だ。

なぜか、この作品の存在を知っていて、私自身は「奇妙な果実」を見に行ったのだが、不意にこの作品に出会って、感動してしまった。

六畳くらいの空間に、上のリンクにある金の涙滴が無数に並んでいる。しかもどこから見ても、まっすぐに並んでいる。(ただ、1カ所だけずれていた)これは圧巻だった。これは伝統的なお菓子がモチーフになっているらしい。黄金の国タイらしい。

また最後に、糸くずが十畳くらいの空間に敷き詰められていた、「黄金の亡霊」があった。そこには黄金のネックレスが一本あって、探し当てられた人はそのネックレスがもらえる。

私の場合、そこにあるネックレスが見つかるわけがないと悟っていて、その糸くずのなかで休憩させてもらった。

また、布に絵を描くという作品が多くあって、それがとてもよかった。伝統的に布に何か書く、とか刺繍するというのが上手い文化圏なのかな、と個人的に思った。

 

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