今日の十分日記

今日の十分日記

原点回帰の雑記ブログ。十分で書ける内容をお届けします。十分以上書くときもあるけどね。十分以下もあるし。

昔のオタクの気持ち悪さは端から見れば面白い。

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 まさりんです。

どうして知らなかったんだろう・・・・・・。

 恥ずかしながら見ていなかったドラマがあって、その再放送を見た。タイトルを「アオイホノオ」というドラマだ。二〇一四年にテレビ東京で放送されていたらしい。言い訳をすれば、いい大人なので、テレビドラマを逐一チェックしたりしないのである。

 ただ、ハードディスクレコーダーを買って、名前などで自動録画する設定にしていると、たまに「どうしてこんなもの録ったのだ」と首を捻る番組を録っていたりする。逆に「どうしてこれを録らなかったのだ」という番組もあるのだが。今回もたまたま録画されていて、なぜか食指が動いた。すげえ面白かった。

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芸大に集まったかつてのオタクたち。

 時として、なぜか才能が一地区に集まることがある。それも東京以外に。近代化以降、文化の発信地は東京に一極集中している。だから、この話に出てくる若者もやがて東京にやってくる。ダウンタウンが大阪から東京に進出した理由が「もう大阪ではやり尽くしたから」という理由であった。

 もしかすると、今の若者にはこの気分は分からないかもしれない。毎年の受験期に、各予備校が受験生の動向を発表する。今の受験生の傾向は、地元志向、理高文低である。理高文低はどうでもいいが、地元志向におじさんは時代を感じるのである。かつてはみんな東京に出たがったからだ。

 昔の東京は「文明の配電盤」と司馬遼太郎が呼ぶほどに日本の中心であった。近代文学とは東京を描くものであった。その時代がいつまで続くのか。ここまで一極集中であった時代は、バブルまでだろう。今でもその残り香はあるが、かつてまでの勢いはない。私は勝手に安室奈美恵たち、沖縄勢が九〇年代に日本の歌謡界を席巻し始め、ヒップホップが、「なんでもかんでも、ディするか、リスペクトして、マジ感謝」し出すころまでだと思っている。

 さて、本題に入ろう。

 舞台は一九八〇年。この年の大阪芸術大学の入学生は豊作であったらしい。

 主人公は焔モユル。いっぱしのクリエイター気取りの青年だ。当時、「ナイン」を描いていたあだち充や、「うる星やつら」を描いていた高橋留美子を、「誰が評価しなくともオレだけは分かっているぞ」とうそぶくような性格である。もちろん、あだち充高橋留美子は評価されていた。つまり、自意識過剰で、才気走った性格だと言えば良いだろうか。

 ある日、パラパラマンガを作ってこいという課題が講師から出される。焔は小学生や中学生が教科書の余白で作ったような、素朴な絵で、人がこちらに走ってくるマンガを作る。同じバトミントン部の先輩である、とんこ先輩に「すごいやん、プロになれるやん」と言われ得意満面に講義に臨むのだが、講義室では人だかりができていた。すごい作品を作ったヤツがいる、と聞かされ、焔はその作品を見に行く。作品とは乗用車の上に、軽自動車が落ちてきて、乗用車を押しつぶすという絵を、詳細な描写で描いた物だった。

 作った男は、「庵野ヒデアキ」。あの庵野である。

 驚いた焔は、「あー」と驚嘆の声を上げながら、キャンパス内を疾走した。

 だが、なぜか、「あの作品のすごさを認めたオレの器の大きさの勝ち」とわけの分からない判定を下す。

 

 次の課題は五人組くらいのグループで、(・・・・・・。つうかこの話知らないのオレくらいかな)映像作品を作るというものだった。プロデューサー志望の山賀ヒロユキは有望な人間に声をかけて、チームを組んでいった。赤井タカミ、岡田トシオ、庵野ヒデアキ、のちに活躍しまくる連中に声を掛けていった。焔にも他のチームからお声がかかった。

 課題発表の日、焔のチームは焔の書いたコンテを無視して、駄作を発表。

 一方の庵野のチームは、低予算で、ウルトラマンのオマージュビデオを発表した。稚拙であるが合成を駆使した作品に、焔以外の学生がアンコールをする。お前らは悔しくないのか、焔は冷ややかな憤懣の表情でそれを見ていた。

 それを「違う」と制止する庵野。「受けようとして作ったのではない、感動させたかったのだ」と言い放つ。焔は庵野に「感動しない」と言い放ち、講義室から走り出ていった。

 

安心して下さい。これは第一話だけです。

 今の若者にいない、自意識過剰ダダ漏れの男たち。しかも役者がやっているから見られるけれども、実際にあったら気持ち悪いヤツら請け合い。それなのに、面白い。

 この作品を監督したのは福田雄一。「アオイホノオ」の原作を書いた、島本和彦の作品「逆境ナイン」を、映像化している。あと、「女子-―ズ」という映画を撮っている。女子の戦隊ものだが、出ている役者がすごい。今をときめくメンバー、桐谷美玲高畑充希有村架純山本美月、などが出ている作品らしい・・・・・・。

あらすじを書いてから放置してしまった。 

 などと書いて放置していたら、二週間が経過し、その間第二話、第三話が終わってしまった。第二話では漫画家になろうと決意したモユルがマンガ研究会に行き、圧倒的に馬鹿な先輩と出会う。この先輩、名前を矢野という。シャア・アズナブル的な行動をよく取る。モユルが思いついたアイデアをつぶしたりする。大学で三回留年して一年である。大学には八年までしか在籍できないのでもう背水の陣である。もう漫画家になるしかないという決意をモユルにつきつける。

 

 第三話ではもう面倒だから書かないけれども、庵野にしてやられる。

 

 結局、回数が進んで行くにつれ、自分には才能がないと気づいていく話な気がしてきた。

ドラマと映画は一緒。 

 二週間前に書いたときには、結局テレビドラマだって、演出・監督の腕と、物語の面白さによって成立しているのだということを書きたかった。そこから他の連ドラの分析をしようと思っていた。夏クールが始まってすぐだから、演出・監督と脚本を誰なのかを分析し、その上で役者が誰なのかを加えれば、どのドラマが面白いかどうかが推測できると思ったのである。真田丸だって、三谷幸喜が脚本を書き、懐かしい役を出したり、工夫をしている。前回は呂宋助左衛門(「山河燃ゆ」のキャラクター)が登場した。その上、話題の上手い役者をそろえているから安定的に見られる。

角川映画の基本はアイドル映画

 ドラマの分析をやろうと気負った結果億劫になってしまった。このまま出してしまおう。続きは誰かがやるだろう。昔のオタクはこういう分析を頻繁にやって、この作品でも出てくるが、「どうしてそんな細かいこと知ってるんだ」という情報を掴んでたりする。「このシーンは〇〇さん演出だ」とか話し合っている。そんな気持ち悪さが最近はない。快か不快かの判断で物事を論ずるのはそろそろ飽きてきた。

 別にテレビドラマを全部見たいとは思わない。だから、このような需要のない分析は不毛だと思った。結局、多くの人が出演している、見目美しい男女がそろっていれば満足なんだろうから。

 

  このブログでも角川映画を扱った。あの映画群は結局売りだしたいアイドルを売るためのプロモート映画の側面があった。もちろんそういう映画だけではない。ただ、共通して物語はそれほど深みのないものが多い。

 

 この前「野獣死すべし」を見たが、これだって松田優作鹿賀丈史だから成立している。もともと同タイトルの大藪春彦の小説では、戦争に対する憎悪を持った世代の設定である。戦中派だろうか。

 松田優作の扮する伊達は元と設定がずいぶん違う。どうして凶暴な性格になっていったのか。ベトナム戦争の映像が挿入されるシーンがあるので、ベトナム戦争に行っていたのだろう。

 鹿賀丈史防空壕跡か何かで女を犯しているところをカメラで撮っているところから、戦場カメラマンだということがわかる。その後の回想でもそうだ。沢田教一だろうか。酒井淑夫だろうか。ベトナムに行った日本人戦場カメラマンも多く存在する。ベトナム戦争の狂気のなか、伊達はイカれてしまった。

 監督が村川透といって、八十年代のアクション映画の雄と言っていいほどの監督が撮っている。やはりすごい映画というのは作り手がしっかりしている。加えて主演が松田優作であることで乗り切れた映画なのかもしれない。アイドルではちょっとできなかっただろう。

すごいドラマは口コミで評判になる。

 テレビドラマというのは角川映画の系譜にそったものである。売り出したいアイドルやモデル上がりの役者を多く登用して作っていた月9がその典型だ。

 角川映画のなかにも「野獣死すべし」などがあるように、テレビドラマのなかにもそういうものがあると信じたい。ただ、雑誌やネットメディアを見ても、こういうものを抽出しようというより、視聴率を取れるかどうかという基準で善し悪しを決めている。この方法ではなかなかすごいドラマというのは抽出できない。だいたい、凄いドラマは事前のメディアの評判より、口コミで広がって話題になるような気がする。

 

 九十年代後半くらい、「踊る大捜査線」がテレビから映画になった辺りから本格的になったが、テレビから映画に逆流出する現象が起こった。(ちなみに「踊る~」も、もともと黎明期のネットによる口コミで話題になっていった)これらが成立する背景には確実に角川映画の影響がある。それに、大画面液晶テレビで映画を見るならともかく、タブレットや下手をすればスマホの極小画面でも映画が見られることになれば、角川的な手法が正解なのかもしれない。個人的には極小画面でもきちんと作った映画の方が面白い気がするが。

 ちなみに、今月末には角川映画の映画祭が開催される。

 

cinemakadokawa.jp

 

アオイホノオ」の魅力に戻そう。 

 このドラマ、リア充が一人も出てこないというのが面白い。モユルは津田ヒロミと森永とんこと妄想三角関係になっている。一番最初、あだち充のマンガが出てくるが、あだち充的な恋愛世界が展開している。

 今の若者が草食系とかいうけれども、草食系へのあこがれは八〇年代から存在していた。この草食系の世界というのは、村上春樹が先か、あだち充が先か。「風の歌を聴け」からそういうテイストがあるから、きっと村上春樹が先だろう。

 テレビ東京系では、木曜日の早朝三時二〇分という恐ろしい時間にやっているから見てみて下さいな。柳楽優弥の当たり役です。

 基本情報

監督・脚本:福田雄一

原作:島本和彦アオイホノオ

配役

焔モユル:柳楽優弥

森永とんこ:山本美月

津田ヒロミ:黒島結菜

岸本:大水洋介(ラバーガール

高橋:足立理

矢野ケンタロー:浦井健二

南マサヒコ:遠藤要

教授:きたろう

庵野ヒデアキ:安田顕

山賀ヒロユキ:ムロツヨシ

赤井タカミ:中村倫也

岡田トシオ:濱田岳

武田:ギタロー(コンドルズ)

凩マスミ:小嶋陽菜

ミノムシミノコ:上地春奈

 

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