今日の十分日記

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原点回帰の雑記ブログ。十分で書ける内容をお届けします。十分以上書くときもあるけどね。十分以下もあるし。

海街diary――十分日記177

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HDDレコーダーに録画されていた、「海街diary」を見た。監督は「万引き家族」で話題になっている、是枝裕和である。

見た感想をまとめれば、「まあまあ」かな。

物語は現実と対になっている。それは現実と同じ、という意味ではなく、むしろ逆に補完する存在だということだ。今はとかく生きにくく、悲惨な話題も非常に多い。そういうとき、人々は物語だけは少し甘めなものを好むらしい。

この話も悲惨な状況にある、すずという少女が出てくる。だが、その悲惨さは、鎌倉の自然や美しい姉妹に糊塗されて、どこかふわふわしている。しかし、現実と対になっているということを考えれば、この程度が限界なのだろう。

 

香田家の物語は「起承転結」の転から始まる。

香田家の両親は少々身勝手だった。

父親は基本的にだらしない性格。女は作るし、借金の連帯保証人になったりもする。当然母親と揉め、離婚する。母親は北海道に行ってしまい、父親は最終的に山形に住むことになる。

<映画本編の始まりはここから>

しばらく経って、父親が山形で死んだという知らせが届き、香田家の三姉妹のうち、次女佳乃(長澤まさみ)と三女千佳(夏帆)が葬式に行くことになる。そこで、中学一年生の浅野すず(広瀬すず)と出会う。すずは継母と暮らしていた。つまり、父親はさらに別れて三人目の妻と暮らし、死んだのだった。

結局、長女幸は葬儀に現れる。

そこで、すずと出会う。気丈に振る舞うすずと接していて、幸は鎌倉の三姉妹の暮らす家に引き取ることを決心する。継母と接してみて、これからの苦労が誰の目にも明かだったからだ。

三姉妹とすずは、ささやかながら私生活の問題と、心配を抱えている。

海街で暮らす様々な人々と接していって、すずと三姉妹は父親の記憶と出会っていく。

 

誰かが主人公というより一家全体の物語であるように感じた。家族共通の悩みもあるのだが、個々に問題を抱えている。

居場所がないといって、すずが鎌倉で大荒れになるわけでもなく、家族が崩壊してしまうわけでもない。九十年代や00年代までならば、それくらいやるだろう。そこが今どきだ。

 

それらは市井の人の悩み程度、と言われればそうなのだが、当人にとっては重大な問題なのである。

 

個人的には、食が世代によって継承される様など、タテの家族の系譜が連々と繋がり、それが系譜の下の代のものに多大な影響を与えるところが面白いと思った。

物語は最後に鎌倉の海で終るのであるが、そこですずの悩みが解消する。物語全体はそのワンシーンにすべてつながっていくようなお話である。物語のさわやかさと同様、非常に据わりの良いお話だった。

 

この記事の始めの方で、「現代的な悲劇の描き方」ということを書いたが、姉妹の母親役として大竹しのぶが出てくるのだが、大竹しのぶだけ、ひとり「現代的な悲劇」のライトさから逸脱したなまめかしさがあり、質量が他の役者と違った。あと、樹木希林ね。

 

 

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