不安にさいなまれたとき、
安堵感が欲しくて、
男はつらいよを見た。
秋吉久美子がマドンナの回だった。
寅さんを頼って、男の子が柴又のとらややってくる。
話を聞くと、父親が死の間際に、「寅に頼れ」という遺言を残したそうだ。
例によってとらやの面々は男の子を粗略にしなかった。
特に子供に恵まれなかったおばちゃんは同情したようだった。
折よく、寅さんが帰ってくる。
実はこの男の子は「秀吉」という名前で、寅さんは名付け親なのだそうだ。
茶の間で寅さんが語って聞かせたところによると、秀吉の父親の政はろくでもない男で、その暴力的な部分に耐えきれなくなって、秀吉の母親は逃げてしまったらしい。
寅さんは秀吉の母親を探すことに決めた。
常識的な感覚だと、置いていった場合、親子の情が再び通うのか、疑問に思う。
だが、このお話の中で親子の情は絶対的である。
すったもんだあって、秀吉は再度母親に出会い、幸せに暮らすようになる。
寅さんと再会した当初、さくらの息子である満男に秀吉は聞かれる。
「寅さんとあって、がっかりしたろ」
秀吉は深くうなづく。
だが、最後別れるときになると、秀吉は寅さんのことが好きになっていて、別れるのを嫌がって大泣きする。
さて、秋吉久美子はというと、お母さんを探す旅の途中、奈良県の吉野で秀吉は高熱を発する。それを寅さんと一緒に看病する。秋吉久美子は実は不倫相手と泊まることになっていて、それを袖にされ、ふてくされ、死のうと思っている。だが、秀吉を看病することで「死ななくてよかった」と改心する。
夜中たたき起こされる医者は、二代目のおいちゃんである。
心が弱っているときはこのくらいべたな話がちょうどよい。