今年の夏は異様に暑い。皆さん体調はいかがだろうか。
去年の8月13日に私は病院に行っていた。数日前に大量に下血して、大貧血になったのである。それから数か月臥せっていたので、個人的に今はとても調子がいいことになるのだろう。
無理をすると私の場合、すぐ体調不良が吹き出す。
だから警戒をしつつも、夏を楽しもうと考えている。
東京上野の西洋美術館で開催されている、松方コレクション展を見に行ってきた。
リンクの画像でわかるように、モネの睡蓮も見どころの一つだ。
気になるかもしれないから書いておくと、平日ながら、美術館はそこそこの混雑だった。平日の午前中がベストだろう。ちなみに近くにやっていた恐竜博はもっと混んでいたと思う。
松方氏というのは明治の元勲松方正義の三男、松方幸次郎のことを指す。三男なのに幸次郎なのはなぜかは私にはわからない。
当然鹿児島出身で、川崎造船のトップになった。折しも第一次世界大戦の最中で、造船業は盛況になる。その財力を背に、日本人に本物の西洋画を見せようという意図で、欧州で多くの美術品を購入して、美術館を開館しようと奔走していた。
だが、実はその派手な行動の裏で、スパイ活動をしていたといううわさもあったらしい。時の政府から、ドイツのユーボートの設計図を手に入れてほしいという依頼を受けていたとも言われている。つまり、美術品購入の口実で欧州社会の有力者と結びつき、その伝手から情報を得ようと考えていたということか。
自分は絵に詳しくないということを自覚していた松方は、お供として成瀬氏などを連れて歴訪した。
美術家との交流も多い。気難し屋のモネとも何度もあって、直接絵画を購入した。
見どころ
この展覧会の一番の素晴らしい点は、実物を見られるということだ。冒頭から書いているモネの「睡蓮」、「舟遊び」、ロダンの「考える人」、「地獄の門」、モネの「ウォータールー橋」などの有名作品が並ぶ。
第一次世界大戦後、関東大震災が起こる。こののちぜいたく品の輸入には100%の関税がかけられることになり、大量に収集したコレクションを国内に持ち込めなくなった。それを管理していたのは元軍人の日置釭三郎で、ナチスがフランスに侵攻した際には戦火からコレクションを守るために、田舎の民家に運んだそうだ。その時フランスに接収されたのであるが、その価値の高さから、フランス側が返却を渋った作品もあった。
ゴッホの「アルルの寝室」、ハイム・スーティン「ページ・ボーイ」などである。「ページ・ボーイ」がわかるというのはさすがフランスだな、と思った。これらの作品も、戦後吉田茂が返却をフランス政府に要望して、返却された。
個人的には藤田嗣治の自画像があったこと、ムンクの「叫び」以外の作品が見られたこと、モネの諸作品が見られたのがよかった。
特にムンクは北欧らしい画風であった。「吸血鬼」は北欧神話の世界を想起させる画風だ。もちろん、吸血鬼自体はドイツだったか?
そりゃ画集でもネットの画像検索でも、作品は見られる。
だが、本物を見ると、まるで印象が変わる。
たまには「ベタかな」と思ってしまうような作品でも見てみるとよい経験になると思う。
行く人の会話も楽しい。
「やっぱりね、デッサンを見るとその人間の才能ってわかっちゃうんだよね」
と中年女性にうんちくを語っている老年男性、
見とれてしまうほどの美しい女性を連れた、藤田嗣治のようなおかっぱ頭をした男、
外国人も多い。
音声ガイドを借りて聞きながら回ったが、やはり理解が深まって楽しい。
なんだか、一時期よりもガイドの値段が下がった気がするのだが。
日本近代美術史を聞いているようで楽しかった。
酷暑の日本、美術館冷えてますよ。
涼みがてら行ってみたらいいと思いますよ。