「ペット禁止!!」
駐車禁止のマークの真ん中にチワワのシルエットが描かれたロゴの下に、そう書かれている貼り紙が、突然エレベーターの前の壁に貼られた。数日前か。
それにしてもきつい文言。
なんか、ここの管理会社は偉そうなのだ。
別に管理会社がオーナーではない。オーナーは別の企業だ。
であるのにも関わらず、昔の長屋の店子のような扱いをするのである。
おそらくどこかの家でペットを飼っているのがばれたのだろう。
たった一件でも、「そら見たことか、おまえら連帯責任だ」という感じでいきり立ってくるのである。
数日後のおとといの夜、あけて早朝三時過ぎか。
上の階で、大掃除でもやってんのかという勢いで、バタバタしていた。
そのおかげでねむれなかった。
そのときに気づいた。
ああ、上の階の人がペットばれたか。
追い出されるのか、それともペットを殺処分したのか。
その腹いせで荒れているのだと思った。
掃除の後は、大音量で映画を流し始めた。
怪獣が吠えるような声がした。
シン・ゴジラではなく、ジュラシックパーク的な雰囲気だった。音楽がスピルバーグ的な音楽だった。
そういえば貼り紙が貼られる前日、管理会社のあの陰険な顔をした担当が、珍しく顔を出していたようだった。建物の真ん中にある階段を上がっていると、上の階の方から、女の人とその担当が言い争っていた、というより担当が一方的に説教している声がした。
女の人が何かを言うと、
「我慢してください」
と怒鳴っていた。
相手の立場が弱いときに、上から圧迫する人間をどうしても好きになれない。
若いときから、そういう人間にはむやみに抵抗を試みたくなる。
うちのかみさんにいうと、
「確かにその日は眠れなかった」
と言っていた。
「でもウチ関係ないよね。うちがチクったわけじゃないし」
「別にウチだけを狙って騒いだわけじゃないでしょ」
マンション全体に腹いせをしたのだ。
「自分が悪いんでしょ。まったく」
人間そういうものだし、私にとってはその担当の方が悪いように思えてならないのである。