ザビ家に追い詰められたラル家は、当主ジンバ・ラルとキャスバル、アルテイシアを地球に逃がす。三人はマス家に匿われる。キャスバルは15歳、アルテイシアは10歳になっていた。二人はスペインのアンダルシアに住んでいた。アルテイシアはセイラと名乗っている。セイラは難民キャンプにボランティアに行くような優しい娘に育つ。一方のキャスバルはエドワウと名乗る。エドワウは何を考えているかわからない、寡黙な男になる。が、妹セイラにはとてもやさしい兄である。
マス家にいるところをザビ家の刺客によって襲われる。刺客によってジンバ・ラルは刺殺される。二人は大けがを負ったマス家の当主とともに、ヤシマ財閥の長であるシュウ・ヤシマに相談し、テキサス・コロニーに移ることにする。その出発のロビーで、セイラとエドワウは、ハロを追っかけるアムロ・レイを見かける。
これを見ていて、夫婦で話題になった。
「どうしてシャアはあんなに頭がいい男なのに、『もしかしてジンバ・ラルの言っていることこそ間違っているかもしれない』という風に考えられなかったのだろう」
二人の出した結論は、「結局シャアは、母親を追い込んだザビ家が許せないのだろう」ということだった。
もっと後、アムロとの最後の戦いのときにシャアがこう言う。
「ララアは私の母になってくれたかもしれない人だ」
「情けない奴」
それに対してアムロはそう一蹴する。
今回描かれているように、シャアが母親と別れたのはもしかするとアムロと変わらない年齢だったのかもしれない。が、母親がそののちにたどった道がずいぶんと違った。シャアの母親は確実に毒殺され、アムロの母親はアムロよりも地球にいることを取った女性として登場する。心理的にアムロの方が親離れしやすい状況だった。
戦争に巻き込まれ必死に戦う息子にアムロの母親は、「情けない子」という冷たい言葉を投げる。良い、悪い、ではない。母親から現実に心身を引き離し、それが間違っているかもしれないが、生き続けなければならない。そういう状況だった。
書きながら気づいたが、それと同じ言葉を後年、アムロはシャアに投げつける。
どちらが不幸であったのかはなんともいえない。
が、結局シャアは幼いころに引き離され、殺された母親の幻像のせいで戦い続けたのかもしれない。それは親友でも殺す、強力な動機になった。それが、年齢を重ねてZガンダムではその怨念が剥落、脱力しきった男になる。そのシャアの姿って、やっぱりアニメでは稀有な設定な気がする。
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